ヴァルナ (神) ヴァルナ (神)の概要

ヴァルナ (神)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/26 05:19 UTC 版)

マカラに乗ったヴァルナ

インド

ヴァルナの起源は古く、紀元前14世紀頃のミタンニヒッタイト条約文には、ミトラ神と共にヴァルナ神の名があげられている[1](条約=国家間の契約ということから)。 しかしヴェーダの時代にはヴァルナの地位は下がり始めており、インド神話においてもインドラのように人々に親しまれる神ではなくなっていた[2]。 『リグ・ヴェーダ』などでは、雷神インドラ、火神アグニとともに重要な位置に置かれ、天空神、司法神(=契約と正義の神)、水神などの属性をもっていたが、この段階ですでにブラフマーによって始源神としての地位を奪われていた。 プラーナ文献においては8つの方角のうち西を守る守護神とされた[3]

一方で、ヴァルナと水との関係性は強まっていき、やがては水の神、海上の神という位置付けが与えられることとなった[3]。また、ヴァルナはしばしばとも関連づけられた。『マハーバーラタ』の中ではナーガ達が暮らす海のあるじだとも、ナーガ達の王だとも呼ばれている。アヒ蛇やヴリトラと同一視されることもあった。ヴァルナは『リグ・ヴェーダ』(IX・73・3)で「海を隠した」とされているが、ヴリトラも同様に水を閉じ込めており、これはどちらも原初の水であった[4]

仏教・神道への影響

仏教に採り入れられた際には水神としての属性のみが残り、仏教における十二天の一つで西方を守護する「水天」となった[5][3]

日本では各地の「水天宮」はこの「水天」(=ヴァルナ)を祀ったものだったが、現在の各地の水天宮の祭神は天之御中主神とされている。これはヴァルナ神の元々の神格が最高神、始源神だったこととは特に関係はなく、偶然である。


  1. ^ a b c 菅沼編 1985, p. 71.
  2. ^ エリアーデ,松村訳, p. 38.(第37章 66 ヴァルナ - 世界の王にして「呪術師」、「リタ」と「マーヤー」)
  3. ^ a b c 菅沼編 1985, p. 72.
  4. ^ エリアーデ,松村訳, pp. 40-41.(第37章 66)
  5. ^ a b 松村 2013, p. 103.
  6. ^ エリアーデ,松村訳, p. 213.(第13章 105 アケメネス朝の宗教)
  7. ^ Mary Boyce (2011). “APĄM NAPĀT”. イラン百科事典. II Fasc. 2. pp. 148-150. http://www.iranicaonline.org/articles/apam-napat 


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