ラクトフェリン
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効果
細菌に対する効果
ラクトフェリンは、強力な抗菌活性を持つことが知られている。グラム陽性・グラム陰性に関係なく多くの細菌は、生育に鉄が必要である。トランスフェリンと同様、ラクトフェリンは鉄を奪い去ることで、細菌の増殖を抑制する[1][2]。ラクトフェリンの鉄飽和度が高まるに従って抗菌活性は低下する。この鉄依存性のメカニズムとは別に、ラクトフェリンはグラム陰性菌の細胞膜の主要な構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)と結合することで、細胞膜構造を脆弱化し、抗菌活性を示す [1][2]。また、ラクトフェリンは緑膿菌によるバイオフィルムの形成を阻害する。ラクトフェリンをペプシンで分解した部分ペプチドであるラクトフェリシンは、細菌の細胞壁に傷害を与えることで、ラクトフェリンよりも10倍以上強力な抗菌活性を示す。 母乳の中でも、とりわけ出産後数日間に分泌される初乳にはラクトフェリンが多く含まれている。授乳により免疫グロブリンやラクトペルオキシダーゼなどと共に、母体からラクトフェリンが新生児に取り込まれる。ラクトフェリンはこれらの因子と共同で、免疫系が未熟な新生児を外敵から防御していると考えられる。乳酸菌やビフィズス菌などの腸内細菌は、生育の鉄要求性が低く、ラクトフェリンは抗菌活性を示さないあるいは、むしろ増殖を促進する[1][2]。幼児にラクトフェリンを投与すると、糞便中のビフィズス菌の検出頻度が上昇することから、ラクトフェリンは腸内フローラの改善に有効であると考えられる。
ウイルスに対する効果
ラクトフェリンはC型肝炎ウイルス(HCV)のエンベロープに結合することで、標的細胞への浸入を阻害する[1][2]。ウシラクトフェリンをC型肝炎の患者に経口投与すると、血中のHCV濃度が低下することが報告されている[1][3]。ラクトフェリンはHCVの他、B型肝炎ウイルス(HBV)・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)・単純ヘルペスウイルス(HSV)・ヒトサイトメガロウイルス(CMV)・ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)の複製を阻害することが明らかになっている[1][2][4]。また、ラクトフェリンは消化管細胞の表面に結合することで、ノロウイルスやロタウイルスの細胞への感染を防ぎ、発症した場合でも症状を緩和する報告がある。[5][6]
原虫に対する効果
トリパノソーマの生育に対して、ラクトフェリンおよびラクトフェリシンは抑制的に働く[2]。
免疫系に対する効果
ラクトフェリンは、白血球の一種である好中球の分泌顆粒にも含まれ、炎症反応や細菌の感染に反応して血液中に放出される[1][7]。また、経口投与されたラクトフェリンが、腸間膜リンパ節およびパイエル板で免疫細胞に作用する可能性が指摘されている。ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の細胞障害作用や,マクロファージの貪食作用はラクトフェリンにより活性化される[8]。また、ラクトフェリンはB細胞やT細胞の増殖を促進する作用もある。これらの免疫系の細胞に対するラクトフェリンの機能は、抗菌活性と同様に生体防御に寄与していると考えられる。ラクトフェリンは細菌由来の炎症物質であるLPSと強力に結合することにより、LPSのマクロファージへの結合を阻害し、炎症性サイトカインであるTNF-αやIL-6の産生を抑制する抗炎症作用を持つ。
脂質代謝改善効果
脂肪前駆細胞から成熟脂肪細胞への分化の過程で、ラクトフェリンを培養液に添加すると脂肪滴陽性細胞の数が減少する。マウスにラクトフェリンを経口投与すると、血液中の中性脂肪と遊離脂肪酸が減少し、肝臓中の中性脂肪とコレステロールが減少する[9]。臨床試験の結果、ラクトフェリンの投与により体重の減少と腹部内臓脂肪の減少が確認されている[10]。
創傷治癒促進効果
ラクトフェリンは真皮を構成する線維芽細胞や表皮を構成する角化細胞(ケラチノサイト)の細胞遊走を促進する。さらにラクトフェリンは線維芽細胞によるコラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進する。皮膚疾患モデルマウスへのラクトフェリンの局所投与により、創傷の治癒が促進され褥瘡が予防されると報告されている[11][12]。
作用
抗酸化作用
過酸化水素からヒドロキシラジカルが生産される反応は鉄により触媒される。ラクトフェリンは生体内で過剰になった遊離の鉄イオンを取り除くことで、ヒドロキシラジカルの産生を抑制すると考えられる[1]。ラクトフェリンを経口あるいは腹腔内に投与したマウスにX線を全身照射すると、ラクトフェリンを投与しないマウスと比較して生存率が上昇するが、これはラクトフェリンが鉄補足によりラジカルの産生を抑制したためと考えられている[13]。
抗がん作用
化学物質投与によるラットの大腸発がんモデル・肺発がんモデルやマウスの大腸癌転移モデルにおいて、ウシラクトフェリンの経口投与は、発がんや腫瘍の転移を抑制する効果が報告されている[1][14][15]。ラクトフェリンは腫瘍細胞にアポトーシスを誘導するほか、血管新生を阻害し栄養と酸素を遮断することで腫瘍組織の拡大を防ぐ[14]。
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