ラクトフェリン
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骨誘導活性
ラクトフェリンは、骨芽細胞の増殖や分化を促進するとともに、破骨細胞による骨吸収を抑制することで骨形成を促進する[16]。骨粗鬆症のモデルラットにラクトフェリンを経口投与すると骨密度が上昇する[17]。これが骨芽細胞や破骨細胞に対するラクトフェリンの直接的な作用によるものかは不明である。
歯周病治療
ラクトフェリンは唾液に含まれており、口腔内の病原微生物や歯周病菌に対して抗菌活性を示す。ウシラクトフェリンの摂取により、歯周ポケット内の歯周病菌数が減少し、歯周病の症状が改善される[18]。さらに、ラクトフェリンは歯周病菌から分泌されるLPSを中和し、TNF-αの産生を抑制することで、歯周組織の炎症や歯周組織の破壊を防ぐ[19]。
ラクトフェリン受容体
小腸上皮細胞の刷子縁膜において、レクチンの一種であるインテレクチン1(別名HL-1)がラクトフェリン受容体として機能していることが明らかになっている[20][21]。ラクトフェリンは刷子縁側からインテレクチンを介して上皮細胞に取り込まれ、細胞応答を引き起こす。以前はラクトフェリンが小腸における鉄イオンの取り込みを担っていると考えられていたが、この仮説は現在では否定され、DMT-1(Divalent metal transportor 1) がこの役割を担っているとされている。 リポタンパク質の細胞内への取り込みを担っているLDL受容体関連タンパク質-1(LRP-1/CD91/α2マクログロブリン受容体)のリガンドの一つがラクトフェリンであることが明らかになっている[20]。骨芽細胞や線維芽細胞において、ラクトフェリンによりLRP-1依存的に細胞内情報伝達経路が活性化される。また、CHO細胞においてヌクレオリンが、マクロファージにおいてグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)が細胞表面におけるラクトフェリン結合タンパク質として報告されている[20]。興味深いことに、GAPDHを除いてトラスフェリンはこれらの受容体とは相互作用しない。 ナイセリア科の細菌およびモラクセラ科の細菌の一部は、ラクトフェリンが抗菌活性を発揮しない。これらの細菌では、ラクトフェリン受容体が細胞表面に発現しており、生育に必要な鉄を取り込むためにむしろラクトフェリンを利用しているが、これは真核細胞のラクトフェリン受容体とは全く構造の異なるタンパク質である[1]。
安全性
乳・チーズなどの食品に含まれるタンパク質であり、ラットおよびヒトにウシラクトフェリンを繰り返し経口投与した安全性試験においても、ラクトフェリンの重い副作用は報告されていない[1][22]。ラクトフェリンは牛乳中の主要アレルゲンではないが、牛乳アレルギーを持つ子供の血清において、ウシラクトフェリンに対する抗体が低濃度ではあるが認められるので注意が必要である。FDA(アメリカ食品医薬品局)は、ラクトフェリンを「一般的に安全と認められる物質(generally recommended as safe)」として、ウシの枝肉表面の微生物汚染を防ぐためのスプレー製剤および機能性食品としての使用を認めている。
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