キャベツ 薬効

キャベツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/03 19:33 UTC 版)

薬効

薬用とする部位は茎葉で、甘藍(かんらん)と称する[4]。胃や十二指腸などの潰瘍予防に、食事の副食にキャベツを積極的に取り入れるよいとされる[1]。食物繊維も豊富なことから、便通をよくする働きから便秘がちの人にも役立つ[1]

古代ギリシアの時代から健康食として薬用に利用されており、様々な機能調整をしてくれる薬菜であり、体質にあまり関係なく万人に合い使用できる[4]8世紀はじめの代に中国で書かれた『本草拾遺(ほんそうしゅうい)』には、「骨髄、筋骨に力をつけ、五臓六腑の機能を整え、関節、耳、目の機能を調製し、胃のつかえを取る」とある[4]

葉はパルミチン酸リノール酸オレイン酸などの脂肪、ビタミンUなどを含んでいる[1]。ビタミンUは抗潰瘍性で、胃潰瘍十二指腸潰瘍などの粘膜のただれを再生する作用があることから、製薬メーカーから製剤も市販されている[1]。キャベツの外側の葉にはビタミンKが多く含まれ、止血作用があり、骨粗鬆症の予防や肝機能を助ける働きがあるといわれている[9]蔬菜類には結石の原因となるシュウ酸を含むものが多いといわれるが、キャベツには含まれない[1]食物繊維も多く、便通をよくする野菜として注目されている[1]

フランスの薬草療養家モーリス・メッセゲによれば、1975年に発表した薬草療法を紹介した著書で、リウマチ痛風腰痛座骨神経痛などの痛みで悩んでいる人に、キャベツの葉をとってすべすべになるまでアイロンがけして、身体の痛い患部に葉を巻き付けて包帯かガーゼで軽く止め、1日数回新しいものと交換するようにすると、痛みを和らげるのに役立つとしている[63]。現在の医師も、授乳中の乳腺炎の腫れにはキャベツの葉で湿布するように勧めているという[64]アメリカヨーロッパインドでは、授乳中の母親は、胸の張りの痛みを和らげるためブラジャーにキャベツの葉を入れるように勧められるというが、医学的には効果がないことがわかっている[65]。日本の民間療法でも、腰痛や筋肉痛に大きめの葉を火であぶって2 - 3枚重ねて貼るとしている[4]

抗癌作用を主張する研究

キャベツが属するアブラナ科の野菜にはがん予防効果があると言われており[66]、がん抑制物質であるアブラナ科のイソチオシアネートなどの成分や、調理過程で発生するニトロソアミンという発がん物質の作用を抑制するペルオキシダーゼの効果とも言われている[9][67][信頼性要検証]。かつて、デザイナーフーズ計画のピラミッドで1群に属しており、カンゾウと共に、最上位に属するニンニクに次いで2番目に高い癌予防効果のある食材であるとの評価を受けていた[9][68]。また、キャベツに多く含まれるビタミンCも抗酸化作用の働きによってがん予防に貢献する[9]

苦味成分のグルコシノレートがんのリスクを低減させるという報告もあるが、キャベツのグルコシノレートはヨウ素の体内摂取を妨げる働きもあることから、甲状腺肥大(甲状腺腫)の原因にもなるので、一度に食べ過ぎるのはよくないともいわれている[69]


注釈

  1. ^ アブラナ科のカラシナ(アブラナ属)には12,000 ppmホースラディッシュ(セイヨウワサビ属)には2,600 ppmという高濃度のイソチオシアン酸アリルが含まれている[14]
  2. ^ ロシアには、細かく刻んだキャベツに肉とコメを合わせた、「怠情な小さなハト」を意味するレニヴィ・ゴルッツィという料理もある[53]
  3. ^ 標高の高い冷涼地で栽培され、「高原キャベツ」ともよばれている。産地は群馬県嬬恋村が有名。[77]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k 田中 1995, p. 173.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 講談社 2013, p. 13.
  3. ^ マッケンハウプト 2019, p. 19.
  4. ^ a b c d e f g 貝津 1995, p. 26.
  5. ^ a b c 講談社 2013, p. 10.
  6. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  7. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版) (PDF)
  8. ^ a b c d e マッケンハウプト 2019, p. 42.
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m 講談社 2013, p. 15.
  10. ^ マッケンハウプト 2019, p. 48.
  11. ^ a b マッケンハウプト 2019, p. 49.
  12. ^ a b マッケンハウプト 2019, p. 50.
  13. ^ a b c マッケンハウプト 2019, p. 51.
  14. ^ a b マッケンハウプト 2019, p. 54.
  15. ^ マッケンハウプト 2019, p. 53.
  16. ^ マッケンハウプト 2019, p. 9.
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  19. ^ マッケンハウプト 2019, pp. 14, 16.
  20. ^ マッケンハウプト 2019, p. 21.
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  22. ^ マッケンハウプト 2019, pp. 113–116.
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  25. ^ マッケンハウプト 2019, pp. 119–120.
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  33. ^ 明雄さんのにっぽん農業ノート 2014年1月19日”. 日本テレビ. 2020年10月21日閲覧。
  34. ^ 【仰天ゴハン】札幌大球(札幌市)厳しい冬 頼れる大物『読売新聞』朝刊2018年11月18日(別刷り「よみほっと」1面)。
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  42. ^ キャベツワイン(富士山NET)北麓の技あり逸品!!
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  67. ^ 一般の方向けがん予防情報 → イソチオシアネート
  68. ^ 大澤俊彦、「がん予防と食品」『日本食生活学会誌』 2009年 20巻 1号 p.11-16, doi:10.2740/jisdh.20.11
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  70. ^ a b c d 主婦の友社 2011, p. 48.
  71. ^ a b c d e f g h i 金子 2012, p. 98.
  72. ^ a b c 主婦の友社 2011, p. 49.
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  76. ^ a b マッケンハウプト 2019, pp. 155–156.
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  80. ^ a b c d マッケンハウプト 2019, p. 154.
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  84. ^ a b マッケンハウプト 2019, p. 72.
  85. ^ a b マッケンハウプト 2019, p. 73.
  86. ^ マッケンハウプト 2019, p. 74.






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