カラスビシャク 名前

カラスビシャク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 09:16 UTC 版)

名前

和名の由来は、仏炎苞とよばれる花の独特の形状が、役に立たないという意味で[1]カラスが使う柄杓に見立てられて名付けられている[2][3]。別名は、ハンゲ(半夏)[2]ヘソクリ[2]へブス[3]ともよばれる。日本の地方により、ヒャクショウナカセ(百姓泣かせ:鹿児島県)、カラスノオキュウ(烏のお灸:群馬県)の方言名でも呼ばれている[2]。別名の「ヘソクリ」は、この草が、昔は漢方薬に使うため、根茎を掘って薬屋に売って小銭をためたというところからきている[1]。陶穀の『清異録』には「痰宮劈歴」の別名がある[4]

花言葉は、「心落ち着けて」[5]である。

分布・生育環境

日本では北海道から九州沖縄まで広く分布し、国外では中国朝鮮半島から知られる[6]。日本の分布は人為的なものと考えられ、中国から古くに帰化した史前帰化植物と考えられている。 北アメリカの一部では、侵略的外来種として問題視されている。

半日陰から日当たりの良い山地の道端地、川原花壇の中などに自生し、畑では雑草になる[2][7][5][6]。抜き取っても根茎は地下に残るために根絶は困難で、畑の害草として知られる[8]

形態・生態

小形の多年草[7]。地下の根茎または、葉柄や地面の近くにむかごを作って繁殖し、駆除が困難なほど繁殖力は旺盛である[2][7]

地下茎は1センチメートル (cm) 内外の形で[7]、その上からと茎葉が出る。草丈は20 - 40 cm[2][3]は、球茎から伸びて立ち上がり、長い葉柄がついて先端につく[5]葉身は卵形から矛形、3小葉複葉へと変化し、若いものは1葉のものもある[7][8]。3小葉の基部や、長さ8 - 16 cmの葉柄の途中には、三角形のムカゴをつけ、落ちて繁殖する[3][7][1]

開花期は初夏から夏(5 - 8月)で雌雄同株[2][3][9]花茎が1本立ち上がり、葉よりもずっと高く、頂にマムシグサの花ような長さ6 - 10 cmある仏炎苞に包まれた肉穂花序をつける[7][5][6][1]。花軸の上部は雄花群、下部に雌花群をつける[8]テンナンショウ属のものによく似た花で、苞の色は紫色緑色である[7]花序の軸の先端が糸状に細長く伸びて苞の外に出ているので[3][7]ウラシマソウを小さくしたような花序の姿をしている。ただしこの属の特徴として雌花序部が背面で仏炎苞に癒合しているので、筒部の下半分がやや細くなって見える。

夏に花が終わると地上部は枯れる[7]

分類

この植物は花の形がウラシマソウによく似ている。むしろテンナンショウ属の多くより似ているくらいであるが、苞の中の柱状の花序がその背面で苞と癒合するなど、はっきりと異なる点から別属とされる。同属のハンゲ属としては日本にはもう1種、オオハンゲ P. tripartita がある。一回り大きく高さは50 cmになり[8]、葉は深く3裂する。本州中部から奄美大島まで、限られた場所に出る。

近縁にニオイハンゲがあり、花に芳香が有り、園芸店などで販売されている[10]


  1. ^ a b c d 金田初代・金田洋一郎 2013, p. 159.
  2. ^ a b c d e f g h i 稲垣栄洋監修 主婦の友社編 2016, p. 28.
  3. ^ a b c d e f 大嶋敏昭 2005, p. 100.
  4. ^ 『清異録 江淮異人録』上海古籍出版社、2012年。 
  5. ^ a b c d 主婦と生活社編 2007, p. 23.
  6. ^ a b c 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 211.
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m 馬場篤 1996, p. 40.
  8. ^ a b c d 大嶋敏昭監修 2002, p. 116.
  9. ^ 田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 211.
  10. ^ 大嶋敏昭 2002, p. 116.
  11. ^ 医薬品の範囲に関する基準” (pdf). 別添2. 「「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」の食品衛生法上の取扱いの改正について」の一部改正について: 厚生労働省 (H27 4 改正46通知本文(最新版)). 2018年3月4日閲覧。
  12. ^ 『長野県衛生部薬務課薬草の知識』長野県衛生部薬務課昭和56年3月31日発行全39ページ中10頁


「カラスビシャク」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「カラスビシャク」の関連用語

1
100% |||||

2
100% |||||


4
96% |||||

5
96% |||||

6
96% |||||

7
96% |||||

8
96% |||||

9
96% |||||

10
96% |||||

カラスビシャクのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



カラスビシャクのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのカラスビシャク (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS