X線CT法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/30 17:50 UTC 版)
X線CT法(X-ray Computed Tomography Method)は、工学材料の非破壊試験法としてX線CTスキャナを使用する方法である。X線CTスキャナは本来、医療診断技術の向上にために開発された非破壊試験装置であるが、1980年代から地盤材料などの非破壊検査に使用されるようになった。やがて、1990年代になると産業用X線CTスキャナが登場し、本格的に工学材料の非破壊検査が可能となってきた。 医療用CT装置と産業用CT装置の大きな違いとして、X線発生装置の起電圧の大きさがある。X線は、X線管の中で発生させられた電子が、高電圧によってターゲットに高速で衝突し、そのときに発生する電磁波の一種であるが、放射線に分類される波動でもあり、医療用のX線発生起電圧は産業用と比較して小さい。小さい起電圧だと、ターゲットに電子を衝突させる加速度が小さいため、発生するX線のエネルギーが小さくなり、工学材料を透過することができない。したがって、工学材料を非破壊検査する場合には、装置の性能を十分に把握し、検査する対象物の大きさ、密度と起電圧装置の大きさの関係を把握しておくことが重要である。 もし、十分な透過エネルギーがない場合、X線ビームハードニング現象に伴って得られるCT画像にはカッピング効果と呼ばれる擬像が現れ、正しく評価できないことがある。しかし、X線ビームハードニング現象は、起電圧をあげるだけで解決するわけでもない。X線には、単周波数の単色X線と、複数の周波数を有する白色X線があり、一般に白色X線を単にX線と呼んでいる。白色X線は、複数の周波数を持つため、エネルギーの小さい波動から減衰し、透過前と透過後のX線のエネルギー分布には著しい差がある。 つまり、高周波数のエネルギーを有するX線が生き残るため、このことをX線が硬くなるといい、X線ビームハードニング現象と呼んでいる。これが顕著に現れるのは、白色X線を使用する場合である。単色X線の場合、透過前と透過後のX線の変化が白色X線と比較して小さいため、X線ビームハードニング現象が生じにくい。したがって、カッピング効果を軽減することができる。白色X線を用いる場合のカッピング効果の軽減手法として白色X線が物体を透過する前に、例えば1mm程度の銅板を透過させ、あらかじめ低周波数のX線を除去し、その後対象物にそのX線を透過させる方法がある。
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