Sakana AIとは? わかりやすく解説

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Sakana AI

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/08/18 22:26 UTC 版)

Sakana AI株式会社
種類 株式会社
市場情報 非上場
略称 サカナAI
本店所在地 日本の旗 日本
105-0003
東京都港区虎ノ門一丁目17番1号
虎ノ門ヒルズビジネスタワー1階[1]
北緯35度40分3.9秒 東経139度45分0.4秒 / 北緯35.667750度 東経139.750111度 / 35.667750; 139.750111
設立 2023年7月[2]
業種 情報・通信業
法人番号 6010401175698
事業内容 生成AI領域における
基盤モデルの研究開発
代表者 デビッド・ハ(最高経営責任者[3]
主要株主 NTTグループ
外部リンク sakana.ai ウィキデータを編集
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Sakana AI株式会社(サカナ エーアイ)は、大規模言語モデル(LLM)を生成する技術の開発に取り組んでいる日本IT企業[3]

概要

研究者のデビッド・ハ(David Ha)、ライオン・ジョーンズ(Llion Jones)、および、外務官僚だった伊藤錬により設立されたIT企業である[2][3][4]東京都港区西新橋に本店を置き[1]、優れた人工知能の開発を目指している[2]

創業から1年以内に企業価値が約11億ドルを超える見通しとなり[2]、日本史上最速でのユニコーン達成と報じられた[2]

名称

正式な社名は「Sakana AI株式会社」[5]であり、法人号以外は全てアルファベット表記である[5]。報道などでは「サカナAI」[2]と片仮名交じりで表記されることもある。「Sakana」は日本語の「魚」を意味しており[6][7]、魚の群れなど自然界の生物に着想を得た人工知能を開発したいとの思いを込めたものである[6][7]。異なる特徴を持つ複数の小規模な人工知能を組み合わせることで[2]、より優れた人工知能を開発することを目指している[2]。この手法を用いることで従来よりも短期間かつ効率的に開発できるとしている[2]。社名の由来に擬えて「小さな魚が集まって一匹の大魚のように泳ぐ物語『スイミー』に似た発想の新技術」[8]とも報じられた。

沿革

創業者のデビッド・ハはグーグルを経てスタビリティーAIに勤めていたが[9]、職務が管理中心となってしまったことから[9]、再び研究に注力したいと考えていた[9]。一方、創業者のライオン・ジョーンズもグーグルに勤め、他の同僚らと論文『Attention Is All You Need』の執筆に参加していたが[9]、労働時間の2割しか研究に割けない現状に不満を感じ[9]、全ての時間を研究に投入したいと考えていた[9]。そこで、ハとジョーンズは研究に没頭できる環境を整えるため、自身の会社を起ち上げることを決意した[9]

2023年(令和5年)7月、Sakana AIが設立された[2]。ハが最高経営責任者に就任し[3]、ジョーンズが最高技術責任者[3]、伊藤錬が最高執行責任者に就いた[3]

2024年(令和6年)1月、コースラベンチャーズラックスキャピタルの主導の下で約45億円を調達した[4]日本からはNTTグループソニーグループKDDIなどが出資に応じており[8]、日本国内ではNTTグループが筆頭株主となっている[10]。さらにはニューエンタープライズアソシエイツ、コースラベンチャーズ、ラックスキャピタルから約1億2500万ドルの調達を目指しており[2]、日本史上最速でユニコーンを達成した企業と目されている[2]

2024年(令和6年)9月4日にはNVIDIAなど複数の投資家から合わせて200億円を調達することを発表[11]

2025年(令和7年)1月、巨大なAIモデルの知識を、計算資源の少ない環境でも動かせるSLM(小規模言語モデル)へ効率的に移し替える新技術「TAID」を発表。これを用いて作成された高性能な日本語モデル「TinySwallow-1.5B」を公開[12]

2025年(令和7年)2月、日本生命からの出資を受ける。

2025年(令和7年)9月、GMO AI&ロボティクス商事と共同で、日本語向け大規模言語モデルの新たな研究開発プロジェクトをスタート[13]

2025年(令和7年)11月、さらに200億円の追加調達を発表[14]

2026年(令和8年)2月、金融領域に特化した高度な専門性を持つAIモデルの開発能力が評価され、シティグループより戦略的投資を受けた[15]

2026年(令和8年)3月、防衛装備庁の防衛イノベーション科学技術研究所と委託研究契約を締結した。陸・海・空のドローン等から得られる膨大なデータを、複数のAIを組み合わせて高速処理・情報統合する技術を用い、指揮統制システム(C2システム)を高度化する実証実験を開始している[16]

会社概要

従業員は基本的にオフィスへの出社を求められている[3]。単なる定型業務に従事するわけではないためリモートワークのみで成果を出すのは難しく[3]、対面でのコラボレーションが必要だとしている[3]。共同創業者のデビッド・ハは、人工知能の研究開発拠点がアメリカ合衆国サンフランシスコ周辺と中華人民共和国北京に集中している点に懸念を示しており「少数の企業や政府によって支配されるのは、世界にとって健全ではなく、私たちはこれを望みません」[6]としている。そのうえで、Sakana AIを日本で創業した理由について「アメリカと中国の間に位置しているのが日本であり、地政学的にも経済的にも、日本が技術開発の分野でより重要になる」[6]としている。

プロダクト

Sakana Fugu

それ自体が言語モデルとして動作しつつ、タスク内容に応じてその他のモデルへと処理を動的に切り替える機能を持ったAPIモデル[17][18]。通常のFuguのほかに高性能版のFugu Ultraと[17]、サイバーセキュリティに特化したFugu Cyberがある[19]。2026年6月22日に通常版とUltraが公開され[17]、Cyberは7月21日に発表された[20]

Sakana Namazu

他社製のオープンウェイト基盤モデルを日本の要件に適応させたモデルである。Llama-3.1 (405B) やDeepSeek-V3.1といったベースモデルに対し、独自の事後学習を施すことで、日本の文化、価値観、安全保障上の要件に適合させている。ベースモデルが持つ高い推論・コーディング能力を維持しつつ、日本の政治や歴史に関する問いに対して客観的かつ網羅的な回答を行う中立性と正確性が大幅に改善された[21]。2026年3月24日にα版の開発が発表された。

Sakana Marlin

独自開発した探索アルゴリズム「AB-MCTS」を使用したリサーチエージェント[22]。自律して調査を行い、最大約8時間稼働して詳細なレポートを作成する[23]。Sakana AIとして初の商用プロダクトである[22]。2026年6月15日に提供が開始された。

Sakana Chat

自社モデルを搭載した一般向けAIチャットサービスである。Web検索機能が統合されており、最新の情報に基づいた対話が可能となっている[21]。Namazuと同日、2026年3月24日に公開された。

Sakana Translate

日本語・英語・中国語の双方向翻訳に対応した無料のAI翻訳ツール[24]。固有名詞や文化概念など、日本社会独自の文脈における翻訳に強いとされる[24]。2026年7月6日にWebアプリとしてSakana Chatへ追加された。

技術

AIコンステレーション

AIコンステレーションという複数の小型AIを連携させ、効率的かつサステナブルに動作させるアーキテクチャも研究している。このアプローチは、大規模AIモデルの高い計算コストや電力消費を低減し、複雑な社会課題を解決することを目指している[25]

進化的モデルマージ

進化的アルゴリズムを使用したモデルマージ技術を開発しており、異なるアーキテクチャのAIモデルを組み合わせて高性能な生成AIモデルを作成することができる[26]。この技術は、英語と日本語の異なるモデルを融合させることで、日本語対応の言語モデル「EvoLLM-JP」、画像に対して日本語で応答するモデル「EvoVLM-JP」、画像生成モデル「EvoSDXL-JP」などが開発されている[26]

AIサイエンティスト(The AI Scientist)

AIサイエンティストは、科学研究の自動化を目指している。このシステムは、大規模言語モデルを活用して、新しい研究アイデアの生成、コードの記述、実験の実行、論文の執筆までを一貫して行うことが可能である[27]

Transformer²

Transformer²は、自己適応型のLLMであり、動的なパラメータ調整機構により、タスクに応じた最適な応答を生成する。これにより、従来のLLMに比べ再学習の負荷が大幅に低減され、リアルタイムな適応が可能となる[28]

CycleQD

CycleQDは、進化的アルゴリズムと品質多様性(Quality Diversity)の概念に基づき、複数のLLMエージェントを生成・進化させる技術である。各エージェントが独自の専門性を保持しながら協調してタスクを遂行する生涯学習型AIシステムの実現を目指す[29]

TAID

TAIDは、LLMの知識を小規模言語モデル(SLM)に効率的に転移するための新しい知識蒸留手法である。生徒モデルの学習進度に合わせて教師モデルを段階的に変化させることで、効果的な知識転移を実現する。この手法を用いて開発された日本語SLM「TinySwallow-1.5B」は、同規模のモデルの中で最高性能を達成している[30]

Doc-to-LoRA

AIに独自の知識を効率的に組み込むための技術。文書を入力するだけで、その内容を反映したLoRA(Low-Rank Adaptation)アダプターを1秒未満で生成することが可能となった。従来のファインチューニングに要した時間を劇的に短縮するこの手法は、検索拡張生成(RAG)に替わる新たなアプローチである[31]

脚注

  1. 1 2 Sakana AI株式会社(東京都港区)の企業詳細 - 全国法人リスト”. 2026年1月25日閲覧。
  2. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 「国内最速ユニコーン――サカナAI、価値1700億円超――創業1年以内」『日本経済新聞』49641号、13版、日本経済新聞社、2024年6月15日、1面。
  3. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 野々村洸「Sakana AIのCOO激白、優秀な人材獲得し『24年に日本でチャンピオン企業になる』」『Sakana AIのCOO激白、優秀な人材獲得し「24年に日本でチャンピオン企業になる」 | 日経クロステック(xTECH)日経BP、2024年4月23日。
  4. 1 2 「AI、複数技術の『掛け合わせ』で進化――サカナAIが新手法」『AI、複数技術の「掛け合わせ」で進化 Sakana AIが新手法 - 日本経済新聞日本経済新聞社、2024年3月21日。
  5. 1 2 「最新情報」『Sakana AI株式会社の情報|国税庁法人番号公表サイト国税庁、2023年7月13日。
  6. 1 2 3 4 渡部圭司・大川祐一郎「米でも中国でもない――世界的な生成AI技術者が日本を選んだワケ」『世界的な生成AI技術者が日本を選んだワケ | NHK | ビジネス特集 | 生成AI・人工知能日本放送協会、2023年11月6日。
  7. 1 2 村井七緒子「『技術オタクを引き寄せる』――元グーグルの2人、東京でAI会社設立」『「技術オタクを引き寄せる」 元グーグルの2人、東京でAI会社設立 [ChatGPT]:朝日新聞デジタル朝日新聞社、2023年9月22日。
  8. 1 2 村井七緒子「『サカナAI』日米で45億円調達――スイミーの発想で巨大ITに挑む」『「サカナAI」日米で45億円調達 スイミーの発想で巨大ITに挑む:朝日新聞デジタル朝日新聞社、2024年1月16日。
  9. 1 2 3 4 5 6 7 村井七緒子聞き手「なぜ日本で? なぜ、さかな? 元グーグルAI研究者がみるポテンシャル」『なぜ日本で?なぜ、さかな?元グーグルAI研究者がみるポテンシャル [ChatGPT]:朝日新聞デジタル朝日新聞社、2023年9月22日。
  10. 清宮信志「東京発のSakana AI、45億円資金調達――NTTが日本での筆頭株主に」『東京発のSakana AI、45億円資金調達 NTTが日本での筆頭株主に - Impress Watchインプレス、2024年1月17日。
  11. “NVIDIA、サカナAIの大株主に AI半導体供給を支援”. 日本経済新聞. 2024年9月4日. 2024年9月4日閲覧.
  12. AI, Sakana (2025年1月30日). Sakana AI (英語). sakana.ai. 2026年3月24日閲覧。
  13. Sakana AI、GMO傘下と日本語向けLLM開発へ カスタマーサポートや介護・福祉領域で活用”. ITmedia AI+. 2026年3月24日閲覧。
  14. 日本発のAIスタートアップ「Sakana AI」が200億円調達 - 起業の「わからない」を「できる」に (2025年11月27日). 2026年3月24日閲覧。
  15. Inc, Nikkei (2026年2月25日). 米金融大手シティ、サカナAIに出資 日本企業へ初の戦略的投資”. 日本経済新聞. 2026年3月24日閲覧。
  16. Sakana AI、防衛装備庁から指揮統制システムの高度化に向けたAI研究開発を受託”. ビジネス+IT. 2026年3月24日閲覧。
  17. 1 2 3 Sakana AI、「Fable 5」や「Mythos」に匹敵するAIモデルをリリース、「Fugu」「Fugu Ultra」/複数のAIを連携、『集合知』を得る仕組み、「輸出規制のリスクを負うことなく、フロンティアレベルの実力を発揮する」”. 窓の杜 (2026年6月22日). 2026年8月18日閲覧。
  18. Sakana AI、ミュトス級謳う“集合知”AIモデル「フグ」”. Impress Watch (2026年6月22日). 2026年8月18日閲覧。
  19. Sakana AI、申請制のサイバー防御向けAI「Fugu-Cyber」”. Impress Watch (2026年7月21日). 2026年8月18日閲覧。
  20. サカナAI、「フグ」にサイバー防御特化モデル 利用は審査制”. 日本経済新聞 (2026年7月21日). 2026年8月18日閲覧。
  21. 1 2 Sakana AI、新AIモデル「Namazu」発表 AIチャット「Sakana Chat」も公開”. ITmedia NEWS. 2026年3月24日閲覧。
  22. 1 2 Sakana AI、初の商用プロダクト「Marlin」リリース その実力は?【出力レポート全文掲載】”. ITmedia NEWS (2026年6月15日). 2026年8月18日閲覧。
  23. Sakana AI、初の商用プロダクト「Sakana Marlin」発表 人間のリサーチ業務を代行”. CNET Japan (2026年6月17日). 2026年8月18日閲覧。
  24. 1 2 Sakana AIが無料AI翻訳ツールをリリース ~日本語を深く翻訳する「Sakana Translate」/日本語・英語・中国語の双方向翻訳に対応し、[翻訳]、[添削]、[質疑]機能を提供”. 窓の杜 (2026年7月7日). 2026年8月18日閲覧。
  25. NTTとSakana AI、サステナブルな生成AI社会に向けたAIコンステレーション研究で連携~小さく賢い多様なLLMの集合により複雑な社会課題の解決をめざす~ (jp). group.ntt. 2024年8月18日閲覧。
  26. 1 2 進化的アルゴリズムによる基盤モデルの構築 (jp). sakana.ai. 2024年8月18日閲覧。
  27. 「AIサイエンティスト」: AIが自ら研究する時代へ (jp). sakana.ai. 2024年8月18日閲覧。
  28. 次世代のAI技術のSakana AI、自己適応型LLM「Transformer2」を発表 動的な学習能力を実現 (jp). atpartners. 2024年8月18日閲覧。
  29. 多様性を重視した集団ベースのモデルマージ - Sakana AI (jp). sakana.ai. 2024年8月18日閲覧。
  30. 新手法「TAID」を用いた小規模日本語言語モデル「TinySwallow-1.5B」の公開 (jp). sakana.ai. 2025年3月8日閲覧。
  31. 日経クロステック(xTECH) (2026年3月24日). 文書の内容を学習なしでLLMに反映、Sakana AIの新技術 RAG代替は可能か | 日経クロステック(xTECH)”. xtech.nikkei.com. 2026年3月24日閲覧。

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