SAHH酵素活性阻害作用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 02:46 UTC 版)
「エリタデニン」の記事における「SAHH酵素活性阻害作用」の解説
エリタデニンは、S-アデノシル-L-ホモシステインヒドロラーゼ(SAHH)の強力な阻害剤である。S-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)は通常SAHHの作用によりアデノシンとL-ホモシステインに異化されるが、この反応は既知となっている脊椎動物における唯一のL-ホモシステイン体内合成経路である。実際に、肝細胞や線維芽細胞を用いた実験で、細胞内のSAHは、通常SAHHによって代謝されてL-ホモシステインとして細胞外へ放出されるが、エリタデニンの投与下では、SAHHが阻害され、細胞内のSAHの蓄積、細胞外へのL-ホモシステイン放出の減少が観察されている。 不可逆的阻害剤を含む環状糖アデノシンアナログ阻害剤とは異なり、エリタデニンは糖鎖部分がエリトロ基の非環式糖アデノシンアナログであり、C2'およびC3'部位は環状糖アデノシン阻害剤とは反対のキラリティを有している。SAHHの結合構造は本来閉じた立体構造を持つが、エリタデニンの非環式糖部分とNAD+間の水素結合によって、環状糖アデノシンアナログよりも酵素に密接に結合する上、エリタデニンの非環式糖部位の開いた構造が活性部位に配置されることにより、可逆的にSAHHの立体構造を変化させ、不活性化すると考えられている。同様の効果はアデニンのN-アルキル誘導体であるキラルな非環式ヌクレオシド類でも見られ、(S)-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アデニン(DHPA)、9-アルキルアデニン、3-(アデニン-9-イル)-2-ヒドロキシプロパン酸(AHPA)などのアデニン誘導体でSAHHの阻害が観察されている。D-エリタデニン、L-エリタデニン、DHPA、およびL-スレオエリタデニンは、記載した順に肝細胞のSAHH阻害活性を示すものの酵素結合NAD+の減少は誘発せず、同時にSAH量を増加させることが分かっている。また、低濃度のD-エリタデニン(6 μM以下)投与では、SAHの蓄積の発生に明確なタイムラグが生じることが観察されており、SAHH活性の阻害がSAHの蓄積に先んじて起こる。これは、因果関係においてSAHH活性阻害が原因で、SAHの蓄積が結果であることを示している。 このSAHH活性の阻害作用は、この後示す様々なエリタデニンの生理活性を引き起こす原因となる作用である。直接的な作用としての高ホモシステイン血症改善効果以外にも、血清コレステロール抑制作用、脂肪細胞の酵素活性阻害作用、細胞毒性を利用した薬用作用の作用メカニズムに関与している。
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