DNAナノテクノロジーにおける利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 19:40 UTC 版)
「ホリデイジャンクション」の記事における「DNAナノテクノロジーにおける利用」の解説
詳細は「DNAナノテクノロジー」を参照 DNAナノテクノロジーは、生細胞内での遺伝情報のキャリアとしてではなく、ナノテクノロジーのための工学的材料として、人工的な核酸構造を設計し作製する技術である。この分野では、より複雑で合理的に設計した構造を作り出すための基礎的構成要素として、分岐したDNA構造が利用される。このようなDNA構造の多くにおいて、ホリデイジャンクションが構成要素となっている。単独のホリデイジャンクション構造では柔軟すぎて大きな規則的アレイへ組み立てることができないため、剛性を持つ「タイル」の作製には複数のホリデイジャンクション構造を持つモチーフが利用される。タイルはその後、より大きな「アレイ」構造へと組み立てられる。 そのような構造モチーフで最も一般的なものはダブルクロスオーバー(DX)複合体である。このモチーフには2つのホリデイジャンクションが近接して存在し、より大きなアレイへと自己集合を行い剛性の高い構造となる。DX複合体の構造では、ホリデイジャンクションの二重らせんドメインは最適角度の約60°ではなく、並列するよう強制される。ジャンクションは平行・逆平行のいずれの方向となるようにも設計することができるが、実際的には逆平行型の方が性質が良く、平行型が利用されることは稀である。 DX構造モチーフはDNAオリガミにおいても基礎的構造構成要素であり、任意の形状を有する二次元・三次元構造を作るために利用される。DNAオリガミでは、1本の長いスキャフォールド鎖(scaffold、足場)が多数の短いステープル鎖(staple、かすがい)によって目的の形状へと折りたたまれる。組み立てられた際には、スキャフォールド鎖は連続的な二重らせんドメインを形成し、ステープル鎖は交差側の鎖としてホリデイジャンクションに加わる。 一部のタイル構造では、ホリデイジャンクションの自然な60°の角度が維持されている。そのようなアレイの1つとして、平行四辺形型に配置された4つのホリデイジャンクション構造がある。この構造には、原子間力顕微鏡によってジャンクションの角度を可視化することができるという利点が存在する。また、3つのホリデイジャンクションを含む三角形のタイル構造が規則的な三次元アレイを形成するために用いられ、生体分子のX線結晶構造解析に利用される。これらの構造は、張力と圧縮力の双方を利用するテンセグリティの概念に基づいた構造ユニットとの類似性から、テンセグリティ・トライアングル(Tensegrity Triangles)と名付けられている。
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