1974年スペイングランプリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/19 14:07 UTC 版)
レース詳細 | |||
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![]() |
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日程 | 1974年シーズン第4戦 | ||
決勝開催日 | 4月28日 | ||
開催地 | ハラマ・サーキット![]() |
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コース長 | 3.404 km (2.115 mi) | ||
レース距離 | 84周 285.936 km (177.672 mi) ※当初の予定は90周 306.360 km (190.363 mi) |
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決勝日天候 | 雨のち晴(ウェット→ドライ)[1] | ||
ポールポジション | |||
ドライバー | |||
タイム | 1:18.44 | ||
ファステストラップ | |||
ドライバー | ![]() |
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タイム | 1:20.83(47周目)[W 1] | ||
決勝順位 | |||
優勝 |
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2位 | |||
3位 |
1974年スペイングランプリ(英: 1974 Spanish Grand Prix、正式名称: XX Gran Premio de España[W 2])は、1974年のF1世界選手権第4戦として、1974年4月28日にハラマ・サーキットで開催された。
概要
84周[注 1][1]で行われたレースは、ポールポジションからスタートしたオーストリア人ドライバーのニキ・ラウダがフェラーリ・312B3で優勝した。ラウダにとってはこれが25戦目で初めての勝利であった。チームメイトのスイス人クレイ・レガツォーニが2位、ブラジル人のエマーソン・フィッティパルディがマクラーレン・M23-フォードで3位となった。
背景
レース前
前戦南アフリカGPから1ヶ月のブランクがあったが、その間の4月7日に非選手権レースのBRDCインターナショナル・トロフィーがシルバーストン・サーキットで行われ[W 3]、ヘスケスのジェームス・ハントが優勝して早くも潜在能力を示した[2]。
サーキット
ハラマでは1972年以来2年ぶりの開催となったが、コースの拡張と安全柵の設置を行った[W 4]。
エントリー
ティレルは新車007をジョディー・シェクターに用意した(パトリック・デパイユは006)。シャドウは亡くなったピーター・レブソンの後任としてブライアン・レッドマンを、ブラバムはリチャード・ロバーツに代わってエンサインを去ったスポンサー持ち込みのリッキー・フォン・オペルを起用した[W 3]。
新たに2つのコンストラクターが参戦を開始した。クリス・エイモンは自身のチーム「クリス・エイモン・レーシング」を立ち上げ、元テクノのゴードン・ファウエルが制作したAF101を走らせる[W 3]。F5000に参戦していたトロージャンは、フリーランスとなっていた元ブラバムのロン・トーラナックがデザインしたT103をティム・シェンケンが走らせる[3]。
スクーデリア・フィノットはシルビオ・モーザーのためにブラバム・BT42をエントリーしていたが、前週のモンツァ1000kmレースで重傷を負ったため欠場した[注 2][W 4]。ジョージア王家の血を引く地元ドライバーのホルヘ・デ・バグラチオンがサーティース・TS16で参加する予定だったが、スペインのモータースポーツ連盟を退任する会長が公式エントリーリストを持ち去ってしまい、急いで代わりのエントリーリストを作成したが、スポンサー契約が切れたデ・バグラチオンがそのリストから漏れてしまったため出場できなかった[W 5]。
エントリーリスト
- 追記
予選
金曜日にロニー・ピーターソンがトップタイムを出したが、ギアボックスの問題が相次ぐロータス・76に不満をいだいていた。土曜日にニキ・ラウダがピーターソンを0.3秒上回りポールポジションを獲得した。2列目はクレイ・レガツォーニとエマーソン・フィッティパルディ、3列目はジャッキー・イクスとカルロス・ロイテマンが並ぶ[W 4]。
ヴィットリオ・ブランビラは1:19.81で9番手のタイムを出したが、メインストレートでウィングソテーが外れてブレーキパイプが切断され、そのままキャッチフェンスにクラッシュした。ブランビラは無傷だったが、彼のマーチ・741は原型を止めないほどにまで大破してしまったため、決勝の出走は不可能となった。このクラッシュによるマシンの排除とフェンスの修復のため、セッションは約1時間中断した。ティレル勢もブレーキトラブルに見舞われ、パトリック・デパイユもブランビラ同様キャッチフェンスにクラッシュしたが、スピードが落ちていた中でのクラッシュだったため、ダメージはマシンの両エンドで済み、ジョディー・シェクターも異音に気づいてピットインし、ブレーキディスクの破損が見つかり事なきを得た[5]。
予選結果
順位 | No. | ドライバー | コンストラクター | タイム | 差 | Grid |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 12 | ![]() |
フェラーリ | 1:18.44 | - | 1 |
2 | 1 | ![]() |
ロータス-フォード | 1:18.47 | +0.03 | 2 |
3 | 11 | ![]() |
フェラーリ | 1:19.25 | +0.81 | 3 |
4 | 5 | ![]() |
マクラーレン-フォード | 1:19.28 | +0.84 | 4 |
5 | 2 | ![]() |
ロータス-フォード | 1:19.28 | +0.84 | 5 |
6 | 7 | ![]() |
ブラバム-フォード | 1:19.37 | +0.93 | 6 |
7 | 20 | ![]() |
イソ・マールボロ-フォード | 1:19.54 | +1.10 | 7 |
8 | 56 | ![]() |
マクラーレン-フォード | 1:19.66 | +1.22 | 8 |
9 | 10 | ![]() |
マーチ-フォード | 1:19.81 | +1.37 | DNS 1 |
10 | 3 | ![]() |
ティレル-フォード | 1:19.86 2 | +1.42 | 9 |
11 | 24 | ![]() |
ヘスケス-フォード | 1:19.87 | +1.43 | 10 |
12 | 14 | ![]() |
BRM | 1:20.03 | +1.59 | 11 |
13 | 17 | ![]() |
シャドウ-フォード | 1:20.20 | +1.76 | 12 |
14 | 9 | ![]() |
マーチ-フォード | 1:20.46 | +2.02 | 13 |
15 | 18 | ![]() |
サーティース-フォード | 1:20.52 | +2.08 | 14 |
16 | 28 | ![]() |
ブラバム-フォード | 1:20.52 | +2.08 | 15 |
17 | 4 | ![]() |
ティレル-フォード | 1:20.65 2 | +2.21 | 16 |
18 | 33 | ![]() |
マクラーレン-フォード | 1:20.65 | +2.21 | 17 |
19 | 19 | ![]() |
サーティース-フォード | 1:20.80 | +2.36 | 18 |
20 | 26 | ![]() |
ローラ-フォード | 1:20.99 | +2.55 | 19 |
21 | 15 | ![]() |
BRM | 1:21.32 | +2.88 | 20 |
22 | 16 | ![]() |
シャドウ-フォード | 1:21.35 | +2.91 | 21 |
23 | 37 | ![]() |
BRM | 1:21.43 | +2.99 | 22 |
24 | 30 | ![]() |
エイモン-フォード | 1:21.79 | +3.35 | 23 |
25 | 8 | ![]() |
ブラバム-フォード | 1:21.85 | +3.41 | 24 |
26 | 23 | ![]() |
トロージャン-フォード | 1:21.89 | +3.45 | 25 3 |
27 | 27 | ![]() |
ローラ-フォード | 1:21.96 | +3.52 | DNQ |
28 | 21 | ![]() |
イソ・マールボロ-フォード | 1:22.09 | +3.65 | DNQ |
出典: [W 7][W 8] |
- 追記
- ^1 - ブランビラは予選中のアクシデントによりマシンが大破したため、決勝の出走を見合わせた[5]。
- ^2 - シェクターはティレル・006、デパイユはティレル・005で記録したタイム[1]。
- ^3 - シェンケンは本来予選落ちだが、ブランビラがマシンの大破により出場できなくなったため、繰り上がりで決勝進出の権利を得た[W 4]。
決勝
(特記のない出典:[6])
決勝日の朝から雨が降り始め、非公式プラクティスは大雨の中行われた。レースが始まる前も雨が降り続いていたが、レース途中には雨が止みそうな状況になってきた。
レースがスタートすると、2列目までの4台(フェラーリ勢、ロニー・ピーターソン、エマーソン・フィッティパルディ)が他に差を付けて飛び出し先頭集団を構成する。その先頭に立ったのはピーターソンで、9周目には2位ニキ・ラウダとの差を2.5秒に広げるも、ラウダも激しい水しぶきの中ピーターソンについていき、3位のクレイ・レガツォーニに17秒の大差を付けた。
20周目には雨が止み、路面はすぐに乾いていく。するとそれまで使っていたレインタイヤが限界となり、各車ドライタイヤへの交換を行うが、首位のピーターソンはエンジンの油圧が0に落ち、コースには復帰したもののまもなくリタイアした。チームメイトのジャッキー・イクスもタイヤ交換でのミスによりリタイアし、ロータス勢は全滅した。
一方、フェラーリ勢は順調にタイヤ交換を済ませ、ラウダとレガツォーニの1-2体制ができあがった。その2台を追うフィッティパルディがレガツォーニに迫っていくが抑えきり、ラウダがF1初優勝、2位にレガツォーニが入り、フェラーリは1-2フィニッシュを挙げるとともに、F1通算50勝目を達成した。フィッティパルディは3位表彰台を獲得した。
以下、マーチのハンス=ヨアヒム・スタックが4位で2戦連続入賞を果たし[W 9]、ティレルのジョディー・シェクターが5位で初入賞を果たした[W 10]。フィッティパルディのチームメイトのデニス・ハルムは6位に入賞した。
なお、降雨により2時間ルールが適用され、レースは本来の90周から84周に短縮された[1]。
レース結果
順位 | No. | ドライバー | コンストラクター | 周回数 | タイム/リタイア原因 | Grid | Pts. |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 12 | ![]() |
フェラーリ | 84 | 2:00:29.56 | 1 | 9 |
2 | 11 | ![]() |
フェラーリ | 84 | +35.61 | 3 | 6 |
3 | 5 | ![]() |
マクラーレン-フォード | 83 | +1 Lap | 4 | 4 |
4 | 9 | ![]() |
マーチ-フォード | 82 | +2 Laps | 13 | 3 |
5 | 3 | ![]() |
ティレル-フォード | 82 | +2 Laps | 9 | 2 |
6 | 56 | ![]() |
マクラーレン-フォード | 82 | +2 Laps | 8 | 1 |
7 | 16 | ![]() |
シャドウ-フォード | 81 | +3 Laps | 21 | |
8 | 4 | ![]() |
ティレル-フォード | 81 | +3 Laps | 16 | |
9 | 33 | ![]() |
マクラーレン-フォード | 81 | +3 Laps | 17 | |
10 | 24 | ![]() |
ヘスケス-フォード | 81 | +3 Laps | 10 | |
11 | 28 | ![]() |
ブラバム-フォード | 80 | +4 Laps | 15 | |
12 | 15 | ![]() |
BRM | 80 | +4 Laps | 20 | |
13 | 18 | ![]() |
サーティース-フォード | 78 | +6 Laps | 14 | |
14 | 23 | ![]() |
トロージャン-フォード | 76 | スピンオフ | 25 | |
NC | 17 | ![]() |
シャドウ-フォード | 73 | 規定周回数不足 | 12 | |
Ret | 26 | ![]() |
ローラ-フォード | 43 | エンジン | 19 | |
Ret | 20 | ![]() |
イソ・マールボロ-フォード | 37 | アクシデント | 7 | |
Ret | 19 | ![]() |
サーティース-フォード | 35 | ギアボックス | 18 | |
Ret | 37 | ![]() |
BRM | 27 | エンジン | 22 | |
Ret | 2 | ![]() |
ロータス-フォード | 26 | ブレーキ | 5 | |
Ret | 1 | ![]() |
ロータス-フォード | 23 | エンジン | 2 | |
Ret | 30 | ![]() |
エイモン-フォード | 22 | ブレーキ | 23 | |
Ret | 8 | ![]() |
ブラバム-フォード | 14 | オイル漏れ | 24 | |
Ret | 7 | ![]() |
ブラバム-フォード | 12 | スピンオフ | 6 | |
Ret | 14 | ![]() |
BRM | 2 | エンジン | 11 | |
DNS | 10 | ![]() |
マーチ-フォード | 予選でアクシデント | |||
DNQ | 27 | ![]() |
ローラ-フォード | 予選不通過 | |||
DNQ | 21 | ![]() |
イソ・マールボロ-フォード | 予選不通過 | |||
優勝スピード(勝者ラウダの平均速度):142.383 km/h[1] | |||||||
ファステストラップ:ニキ・ラウダ - 1:20.83(47周目)[W 1] | |||||||
出典: [W 11][W 12] |
- ロニー・ピーターソン - 20周 (1-20)
- ニキ・ラウダ - 62周 (21-22, 25-84)
- ジャッキー・イクス - 2周 (23-24)
主な記録
(特記のない出典:[W 4])
ドライバー
- 初優勝 / 初ファステストラップ:ニキ・ラウダ - 31戦目[W 14]
- 初入賞:ジョディー・シェクター - 10戦目[W 10]
コンストラクター
エンジン
- 通算50勝:フェラーリ
- 1972年ドイツグランプリ以来続いていたフォード・コスワース・DFVエンジンの連勝記録が22でストップした(2024年終了時点でも歴代1位を維持している)[W 17]。
第4戦終了時点のランキング
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|
- 注: トップ5のみ表示。有効ポイントは前半8戦のうちベスト7戦と後半7戦のうちベスト6戦の合計。
脚注
注釈
- ^ 当初の予定は90周だったが、降雨の影響により2時間ルールが適用されて84周に短縮。
- ^ モーザーは意識が戻らないまま、同レースの約1ヶ月後(5月26日)に亡くなった[4]。詳細はシルビオ・モーザー#事故死を参照。
出典
- 書籍
- ウェブサイト
- ^ a b “Spain 1974 - Best laps” (英語). STATS F1. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “Motor Racing Programme Covers: 1974”. The Programme Covers Project. 2017年10月28日閲覧。
- ^ a b c “Spanish GP, 1974” (英語). grandprix.com. 2018年8月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年7月15日閲覧。
- ^ a b c d e “Spain 1974” (フランス語). STATS F1. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “Jorge de Bagration - Biography” (英語). Formula One Rejects. 2013年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年7月15日閲覧。
- ^ “Spain 1974 - Race entrants” (英語). STATS F1. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “Spain 1974 - Qualifications” (英語). STATS F1. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “Spain 1974 - Starting grid” (英語). STATS F1. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “戦績:H.J.シュトゥック”. F1 DataWeb. 2025年7月15日閲覧。
- ^ a b “戦績:J.シェクター”. F1 DataWeb. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “1974 Spanish Grand Prix” (英語). formula1.com. 2015年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月22日閲覧。
- ^ “Spain 1974 - Result” (英語). STATS F1. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “Spain 1974 - Laps led” (英語). STATS F1. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “戦績:N.ラウダ”. F1 DataWeb. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “戦績:トロージャン”. F1 DataWeb. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “戦績:エイモン”. F1 DataWeb. 2025年7月15日閲覧。
- ^ “Statistics Engines - Wins - Consecutively” (英語). STATS F1. 2025年7月15日閲覧。
- ^ a b “FIA Formula One World Championship 1974 Spanish Grand Prix Standings” (英語). Motorsport Stats. 2025年7月15日閲覧。
参照文献
- Wikipedia英語版 - en:1974 Spanish Grand Prix(2024年8月22日 14:59:33(UTC))
- 林信次『F1全史 1971-1975 [名手スチュワートの退場/若手精鋭たちの新時代]』ニューズ出版(現:三栄)、1993年。ISBN 4-938495-05-8。
- ダグ・ナイ「第20回スペイン・グランプリ」『AUTO SPORT No.146 1974年7月1日号』、三栄書房、1974年、27-33頁。
- 「S.モーザー死亡」『AUTO SPORT No.148 1974年8月1日号』、三栄書房、1974年、90頁。
外部リンク
- Spain 1974 - STATS F1(レースレポートのみフランス語。他は英語)
- Spanish GP, 1974 - grandprix.com(2018年8月13日時点のアーカイブ)(英語)
- 1974年第4戦スペイングランプリの結果 - F1 DataWeb
前戦 1974年南アフリカグランプリ |
FIA F1世界選手権 1974年シーズン |
次戦 1974年ベルギーグランプリ |
前回開催 1973年スペイングランプリ |
![]() |
次回開催 1975年スペイングランプリ |
- 1974年スペイングランプリのページへのリンク