類似ジャンルとの比較
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/10 07:50 UTC 版)
ハードSFは、作品の設定が科学的な合理性を重要視しておこなわれており、作品中で登場するさまざまな技術的成果物や事件に対して、科学的な(あるいは疑似科学的な)原理の説明が与えられる点で、単なるガジェットSFとは異なる。 軌道エレベータを例にするならば、赤道上以外の位置に軌道エレベータを設置することは難しいという力学上の問題や、建造に必須の非常に強度の高い建築素材をどのように製造・調達するのか、さらにはそもそもどの様な手順で軌道エレベータを設置するのか、などといった工学的諸問題について、それらを技術的に解決する様子を理論的にありうる整合性を持って描写するのが典型的なハードSFである。極端な話、「どうやって軌道エレベータを設置したのか」という、そこまでを正確な科学技術の理論の説明を付加したドキュメンタリータッチの物語として描くだけでも、ハードSFとしては成立し得る。 これに対して、工学的な諸問題については立ち入らず、「軌道エレベーターの技術的な確立がされていること」ないし「軌道エレベータが既にそこに存在していること」を物語成立の前提条件として、これを舞台に、あるいは道具立てとして、ストーリーを展開させてゆくのがガジェットSFである。 そのため、ハードSFを書く作家について言えば、その職業的知識や経験を作品に生かせる元あるいは現役の技術者や科学者などといった経歴を持つ者が多い。 ハードSFはスペースオペラとも好対照を見せている。ここでは超光速航法を例にとる。現実の物理学では相対性理論によって、物体は光速度を超えるまで加速することはできない。しかし、太陽系外、特に複数の恒星系間を股に掛けて舞台とするSFでは、光速度を超える速さでの移動が物語上要求されるため、硬軟を問わず無数の超光速航行理論が提唱されている。 ハードSF作品においては宇宙を舞台にする場合、舞台は太陽系内か、近郊の恒星系にとどめることになる。疑似科学あるいは最先端の物理学の仮説を応用・拡張して、超光速航法の理論を構築するものもあるが、あくまで超光速の移動手段は登場せず、亜光速以下の速度の移動手段しか登場しないものも多い。 スペースオペラ作品群はそうした光速の壁には頓着せず、宇宙を縦横無尽に駆け巡るために超光速航法をブラックボックスとして使用している。スペースオペラにおいて、科学的な設定を施したものはモダン・スペースオペラとも呼ばれる。
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