頬叩き寒さを湖に飛ばしけり
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冬 |
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評 言 |
赤城山、榛名山と共に上毛三山の一つである妙義山。その山麓の妙義神社の門前に居を構えておられる作者は、北麓にある妙義湖を、毎年大晦日の真夜中に一人で吟行されている。四十二歳でロータリークラブのメンバーに選ばれた時に、何か自分に課することをしようと思い立って始めたことで、毎年続けておられる。あと二年で五十年になる。 湖畔の車道の行き止まりに一軒だけ「国民宿舎裏妙義(平成28年3月末で閉鎖)」があるが、大晦日の真夜中には行き来する車もなく、人の気配は全く無い筈である。 初めて、湖のほとりに車を停めて、湖畔に佇んだときには、恐怖で震えたそうだ。森の中の獣の気配や、寒禽の騒ぐ音だけでも、背筋がぞくぞくするほど恐ろしかった。妙義湖は冬場も凍結せず、鴨や鴛鴦などが五百羽も越冬することでも知られている。ところが、回を重ねるごとに、大自然の中に居て、落ち着いた時を過ごせるようになったそうだ。 この句は、平成19年の作である。作者は、寒さの中で凍り付きそうになりながらも、自ずから与えられる言葉を待っているのだろう。時々、露出している頬を叩きつつ己を鼓舞している作者の有り様が想像できる。 近作として、平成24年〈独尊の境地星座の凍てのなか〉、平成25年〈去年今年静かや湖の底に星〉、平成26年〈踏み入りし音懐かしき落葉かな〉、平成27年〈爆裂のごとき寒禽夜を覚ます〉などの句が詠まれている。 出典:平成20年度版角川「俳句年鑑」 引用元:www.pashadelic.com 写真:masaki.kaji |
評 者 |
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備 考 |
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