原田要三

現代俳句データベース(人名)

原田要三

原田要三の俳句

いちはやく腰の気づきし隙間風

これ以上やさしく吹けぬしやぼん玉

しばらくは野火の走るにまかせをく

なるやうになりたる果ての身のおぼろ

ぶらり蓑虫けふは新聞休刊日

われに妻夢二にをんな松虫草

亀鳴けり老いも楽しとうそぶけば

俘虜たりし漢身構ふ大野焼

俳壇史に弾圧の闇亀鳴けり

免れぬ昭和の呪縛いわし雲

兜煮の二つの眼窩そぞろ寒

冴返る駈込寺に裁きの間

冷し酒挫折越え来し陰に妻

初夢のしつぽを妻に踏まれけり

取れさうな釦に気づく草じらみ

埋蔵金隠し続けて山眠る

外套の中の孤独を連れ歩く

大博奕打てぬ男の半ズボン

志ん生もカラヤンも好き冬ごもり

懐手監視カメラにふと気付く

春の雷まさに正座を崩すとき

次の駅見ゆる江ノ電陽炎へる

炉話に黙せばユダと思はれさう

目つむればからまつ落葉日のいろに

眉間皺消すすべのなし太宰の忌

着ぶくれて日銀支店の前通る

脳病院等間隔に立つ冬木

良寛の風とらへたるいかのぼり

芋虫が先か悲鳴が先かとも

蜥蜴の目ジュラ紀のひかり失はず

豊頬の妊婦出でくる薔薇の門

踵みな血の色に映え寒稽古

身に入むや太宰の墓に酒・煙草

酷評を寒九の水と飲みくだす

野遊びのひとごゑときに歌となり