関係とグラフ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:31 UTC 版)
定義から、グラフ G がまったく同じになるような関係があっても、始集合 X や終集合 Y が異なれば、それらは相異なる別の関係である。たとえば G = {(1,2), (1,3), (2,7)} を共有する三つの関係 (Z, Z, G), (R, N, G), (N, R, G) はそれぞれ異なる関係を表す。 ただし、関係の定義に始集合 X や終集合 Y を考慮しない流儀も一般的である。この場合、二項関係とは X × Y の部分集合であるグラフ G そのものをいうのに相違ない。このような立場では、対の集合{(1,2), (1,3), (2,7)} は {1, 2} を含む任意の始集合から {2, 3, 7} を含む任意の終集合への関係を表す。 この差異を、関係の特別な場合として写像の概念に適用する場合を考えよう。多くの文脈では、写像の終域と値域とを異なるものとして峻別して扱うので、ひとつの「規準」として例えば実数 x に x2 を対応させるとき、終域を実数全体 R とするか、あるいはより精密に非負の実数全体 R+ とするかによって、二つの異なる写像 f: R → R および g: R → R+ が得られる。しかし別な文脈では、写像とは単に第一成分が一意であるような順序対の集合として扱われることもある。この差異はとある自明でない問題から生じていると見ることができる。例えば、前者の立場では写像の性質として全射性を考えることができるし、一方で後者は集合を生み出す関係性として写像を捉えることができる。 この二つの異なる定義の違いが問題となるのは圏論のような極めて厳密な文脈のみであって、殆どの場面で何れの流儀であってもさほど問題となることはないし、必要に応じて適当に用語や記法を変更してやれば、関係の制限や関係の合成、逆関係といった概念を定義することができる。
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