長期被曝の影響に対する研究背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 21:07 UTC 版)
「チェルノブイリ原発事故の影響」の記事における「長期被曝の影響に対する研究背景」の解説
チェルノブイリ原発事故では、膨大な数の人が放射性降下物による影響を受けており、甲状腺癌と白血病に対する組織的な研究は進められてきたが、他の癌についても研究対象を広げて、放射性降下物がもたらす長期にわたる放射線被曝による健康への影響を調べるために、組織的かつ大規模な研究が望まれている。しかしながら、放射線防護の基礎データとなっている原爆の研究でも、放射性降下物による内部被曝の影響に対する研究は半世紀以上が過ぎながらあまり進められていなかった。その要因の一つとして、原爆に伴う放射線の大部分がガンマ線と中性子によるもので、それらの初期放射線に比べて、放射性降下物等による残留放射線の影響は無視できるほど小さいと考えられ、これまであまり考慮されることはなかった。 一方、チェルノブイリ原発事故によって放出された放射性降下物の量は、広島に投下された原爆によって放出された放射性降下物の量と比較しても桁違いに多く、IAEAの試算では、およそ400倍と見積られている。その中でも比較的に長寿命核種であるセシウム137の放出量は、国際科学会議によって設立された環境問題科学委員会 (SCOPE:Scientific Committee On Problems of the Environment) によると、広島原爆に比べて、チェルノブイリ原発事故では890倍と報告されている。 原爆および原発事故によって放出された放射性物質の放射能の比較放射性物質の放出量 (1015Bq)セシウム137セシウム134ストロンチウム90キセノン133ヨウ素131広島原爆 0.1 - 0.085 140 52 チェルノブイリ 89 48 7.4 4400 1300 これまで放射性降下物によってもたらされる長期間の放射線量は短期的な暴露よりもリスクは小さいと考えられていたが、近年、そのリスクはあまり変わらないという証拠が集まってきており、今後、さらに研究が進めば、原爆によって瞬間的に浴びた外部被曝の影響と、チェルノブイリで放出された膨大な長寿命種の放射性降下物による長期にわたる低線量被曝との違いが明らかになる可能性がある。
※この「長期被曝の影響に対する研究背景」の解説は、「チェルノブイリ原発事故の影響」の解説の一部です。
「長期被曝の影響に対する研究背景」を含む「チェルノブイリ原発事故の影響」の記事については、「チェルノブイリ原発事故の影響」の概要を参照ください。
- 長期被曝の影響に対する研究背景のページへのリンク