違法行為類型説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 23:40 UTC 版)
故意・過失を責任要素であるとの立場から、構成要件を故意・過失を含まない「違法な行為の類型」と定義する見解。結果無価値論の立場から主張される。この見解においては、構成要件の故意規制機能が重視されており、故意の対象として構成要件を想定するため、構成要件概念から故意、過失といった責任要素を除外するのである。この有力説からは、故意または過失により構成要件該当事実を実現することが(違法性阻却事由、責任阻却事由および処罰阻却事由が存在しない限り)可罰的な犯罪事実であることになる。故意犯と過失犯が構成要件のレベルでは区別されないから、その限度では構成要件は犯罪個別化機能を有しない。通説が構成要件と呼んでいるものを犯罪類型と呼び、これが犯罪個別化機能を有することとなる。構成要件は、違法推定機能は有するが、責任推定機能は有しないとするのが一般である。なお、行為無価値論の立場から、違法行為類型であるが、違法要素としての故意・過失を含むとする説もある。この定義はメツガー等により提唱されたものであり、その実体的意義は、法領域の性質への着目である。例えば、他人に権利があるものを無断で所持または処分する行為は、禁止規範体系の刑罰法規に規定されることで違法性を持ち、ここにおいて、この行為は民法でもなく、憲法でもなく、刑罰法規によって取り扱われるということである。構成要件はこの違法性という法領域の性質により、他の法領域における法律要件と区別される。この理論が行為論の後に説明されることがあるのは、法領域の性質により行為は分別されるからである。
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