農業政策としての原産地呼称および地理的表示の保護
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 19:44 UTC 版)
「原産地名称保護制度」の記事における「農業政策としての原産地呼称および地理的表示の保護」の解説
一度原産地呼称や地理的表示が保護の対象になったならば、その地域の生産者は保護の申請をした団体に属していようといまいと明細書の通りに製品を製造していればPDOやPGIの表示を使用することができる。 原産地呼称保護や地理的表示保護の経済的な重要性は大きい。農産物に付加価値をつけようとする場合、有機農産物を作るというような方法もある。しかし、この種の方法ではすぐに誰もが参入してきて生産者の受け取るレントはゼロになる。一方、地理的表示により差別化した場合には、それが保護されている限り他の生産地で模倣することはできない。生産者はレントを受け取り、それは労働力、技術・技能、土地、知的財産などに再投資され、また、地域外からは生産品のプレミアム価格、観光産業と結びつく評判、加工品の販売促進などの利益があり、地理的表示は農村部発展の好循環を生んできている。 原産地呼称保護のような公的な地理的表示保護制度が、本当に生産者の経済的利益になるかという点は地理的表示保護制度をめぐるテーマの一つである。 小規模の生産者にとっては特別な質を持つ製品に対して自身が投資することは、費用が掛かりすぎるし、また大手企業に比べて資金を調達することも難しい。もっとも、ある新製品を開発したとして、独自のラベリングを適用し、製品の開発費および宣伝費を、生産者のグループを組織してそのグループで負担することもできる。この場合、開発費および宣伝広告費が生じるが、変動原価は少なく、生産規模は大きくなる。一方で、ニッチ戦略を選択し、公的な原産地呼称保護の対象として販売する場合は、その特別な質を実現するために変動原価は高くなり、生産量にも制限があるが開発費および宣伝広告費は低く抑えることができる。結論としては、原産地呼称保護のラベルが効果的かどうかは、開発費および宣伝広告費といった固定原価と、生産に関わる変動原価の比較で決まる。
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