転写と共役した調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 21:32 UTC 版)
「アンチセンスRNA」の記事における「転写と共役した調節」の解説
DNAメチル化やヒストンメチル化などのエピジェネティックな調節は、転写の開始を阻害することで遺伝子発現を抑制する。しかし、遺伝子の抑制は転写過程の早期終結や速度低下によって行われる場合もある。asRNAもこのレベルでの遺伝子調節に関与している。例えば、複雑なRNAポリメラーゼが存在する細菌または真核生物細胞では、同じ遺伝子座からの双方向的な転写はポリメラーゼの衝突を引き起こし、転写の終結をもたらす場合がある。転写が弱く、衝突の可能性が低い場合でも、ポリメラーゼの一時停止によって伸長反応が遮断され、遺伝子の抑制が引き起こされる。一例は、出芽酵母IME4遺伝子のasRNAであるRME2による抑制である。転写と共役した形で転写に影響を与える他の方法としては、スプライシングの遮断がある。ヒトにおける典型的な例としては、E-カドヘリン(英語版)のリプレッサーであるZEB2(英語版)が挙げられる。ZEB2のmRNAの効率的な翻訳には、5'末端のイントロン中のIRESが必要である。ZEB2のasRNAが発現しているときには、asRNAがスプライシング部位を覆うためIRESはmRNA中に維持され、その結果ZEB2は効率的に合成される。さらに、asRNAの発現レベルに依存して、センス転写産物の異なるアイソフォームが産生される場合がある。したがって、asRNA依存的な調節は遺伝子発現のオン/オフの切り替えにとどまらず、むしろきめ細やかな制御系を構成している。
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