軌道長半径を予測する試み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/22 14:00 UTC 版)
「プラネット・ナイン」の記事における「軌道長半径を予測する試み」の解説
Sarah Millholland と Gregory Laughlin による解析では、eTNOs の尽数関係 (軌道周期の比率が簡単な整数比になっている状態) のパターンが存在することが確認された。この解析では,もしプラネット・ナインの軌道長半径が 654 au であった場合に軌道共鳴に近い状態にいると考えられる5つの天体が特定された。セドナ (3:2)、2004 VN112 (3:1)、2012 VP113 (4:1)、2000 CR105 (5:1)、2001 FP185 (5:1) がその5天体であり、括弧内はプラネット・ナインとの周期の比である。彼らはこれらの eTNOs が共鳴している相手の天体がプラネット・ナインであるとしたが、バティギンとブラウンが提唱した軌道要素とは異なり、軌道離心率は 0.5 程度、軌道傾斜角は 30° 程度、近日点引数は 150° 程度、昇交点黄経は 50° (バティギンとブラウンがによる昇交点黄経とは 90° 異なる) と提唱した。 Carlos および Raúl de la Fuente Marcos も既知の eTNOs に見られる軌道周期の尽数関係がカイパーベルト天体で見られるものと似ていることを指摘している。カイパーベルト天体同士の軌道周期の尽数関係は、それぞれの天体が海王星との軌道共鳴に入っていることによって偶然発生するものである。これらの天体の多くは、軌道長半径がおよそ 700 au の天体との 5:3 と 3:1 の軌道共鳴に入っている可能性があると考えられる。 172 au 付近のより小さい軌道長半径を持つ3つの天体 (2013 UH15、2016 QV89、2016 QU89) もプラネット・ナインと軌道共鳴を起こしているという説が提唱されている。これらの天体は、もしプラネット・ナインの軌道長半径が 315 au だった場合に共鳴を起こしており、プラネット・ナインとは反対の位置に軌道が揃っているとされるが、この軌道長半径の値はバティギンとブラウンの仮説よりも小さいものである。あるいは、プラネット・ナインの軌道長半径が 505 au であった場合は軌道共鳴を起こせるが、小天体の軌道配置はプラネット・ナインによって偏らせられずに循環するようになるとも考えられている。 Elizabeth Bailey、ブラウンとバティギンによる後の解析では、もしプラネット・ナインが離心率と傾斜角の大きい軌道にいる場合、eTNOs の大部分を高次の軌道共鳴に捕獲することと、様々な共鳴の間のカオス的な移動によって、現在の観測を元にしたプラネット・ナインの軌道長半径の特定が妨げられる可能性があることが分かった。この解析では、プラネット・ナインの軌道離心率が大きい場合、原論文で解析に用いた6個の eTNOs がプラネット・ナインと n:1 か n:2 (n は整数) の共鳴に入っている確率は 5% 未満だろうと予測した。
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