軌道の段階
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 21:36 UTC 版)
図1において、地球とラグランジュ点 L5 の間の内側である点Aをスタート地点とする。この場所は地球より内側であるため、小惑星の軌道速度は地球よりも速く、地球を追い抜こうとする (図中では、太陽と地球の間を通過しようとする)。しかし地球の引力によって公転方向に沿って前向きに加速されるため、小惑星の軌道は大きくなり、角速度は低下する (ケプラーの第三法則参照)。小惑星は前方に「加速」されているものの、それによって軌道が大きくなるため、角速度や軌道速度は減速してしまうことに注意が必要である。 小天体が点Bにある時、軌道半径が地球と一致し地球と同じ軌道速度になる。地球の重力はなお小惑星を前方に加速し続けるため、小惑星の軌道はさらに大きくなる。点Cでは、小惑星の軌道半径は最大、軌道速度は最小という状態に到達し、公転の角速度や軌道速度が地球よりも遅いため地球から引き離され始める。その後は長い期間に亘って、地球を基準に考えると小惑星が「後退」していくように見える時期が続く。この時、小惑星が太陽を公転する周期は地球の公転周期である1年よりもわずかに長くなっている。充分に時間が経つと、小惑星は地球から見て太陽の反対側を通過する。 その後小惑星は点D周辺に到達する。そうすると今度は地球の重力は小惑星の公転方向とは逆向きの、小惑星を減速させようとする方向に働くことになる。そのため小惑星の軌道は内側へと落下し、それによって小惑星の公転角速度や軌道速度は上昇することになる。ここでも、小惑星は後方に「減速」されているものの、軌道が小さくなった結果として速度は大きくなることに注意が必要である。この過程は小惑星が点E周辺に到達するまで継続し、小惑星は地球よりも内側の軌道で地球よりも速く公転することになる。そのため今度は小惑星は地球を引き離すように前方へ遠ざかっていくことになる。再び長い期間が経過した後、小惑星は点Aに戻り、馬蹄形軌道の1回のサイクルが終わって次のサイクルが始まる。 より長い期間では、小惑星は馬蹄形軌道と準衛星軌道を遷移する場合がある。準衛星は惑星に重力的に束縛されてはいないものの、惑星と同じ軌道周期で太陽の周りを公転し、惑星から見ると逆行軌道で公転しているように見える天体のことである。2016年までに、地球に対する馬蹄形軌道にある4つの天体と5つの準衛星はいずれも馬蹄形軌道と準衛星軌道を繰り返し行き来していることが、軌道計算から明らかになっている。
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