超光速通信の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/29 16:44 UTC 版)
何百、何千、何万光年と離れた恒星間で、タイムラグのない交信が可能だとしたら、そのように離れた場所において、「同時」という絶対的概念が存在するということになる。それ自体が、アインシュタインの相対性理論に反する結果になる。例えば上記のタイムマシンを使った超光速通信を例にとって考えてみれば、一体どれだけの時間を遡れば、出発地と目的地で「同時」と言えるのかどうかという問題が生じる(100光年離れた目的地であれば、100年時間を遡れば問題なしだと思われるかもしれないが、アインシュタインの相対性理論を考えれば、異なる場所では時間の進み方が違うことを考えないといけない)。 さらに言えば、超光速通信がもしあれば過去への通信が可能となり、結果的に因果律が崩壊する。上記のように、相対性理論では同時という概念には絶対性がない(同時の相対性という)。惑星Aと惑星Bがあり、それぞれの惑星でA1,A2,…とB1,B2,…のように時間が流れているとする。「同時の相対性」より惑星Aから見た「同時」と惑星Bから見た「同時」には絶対性がないとする。単純化のために以下のような状況を仮定する。 惑星Aから見て 「A6とB1が同時」「A7とB2が同時」… 惑星Bから見て 「B1とA1が同時」「B2とA2が同時」… とする。 惑星Aから超光速通信で一旦惑星Bに通信を行い、通信が届いたらすぐに惑星Aに通信を返すことを考える。惑星間通信の遅れは1とする。最初にA10から通信を始めると A10 → (B5+1=) B6 → (A6+1=) A7 と通信文は届き、結果的にA10からA7という過去への通信が可能になるのである。(同様に未来への通信も可能である。)過去への通信ができると因果律が崩壊する。明日の新聞を入手して、株価の変化を知りいくらでも儲けることが可能である。しかし、明日の新聞に自分の死亡事故の記事が載っていたとして、それを避けた場合、その記事そのものがなかったこととなり矛盾が発生する。(参考:『タイムマシンの話―超光速粒子とメタ相対論』都筑卓司著)
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