赤酒(あかざけ)
熊本地方の特産で甘く独特の風味のある赤い酒。製法は清酒に似ているが、上槽前の熟成した醪(もろみ)に木灰を加えて酸を中和し、微アルカリ性の酒とする。火入れ殺菌せずに火落ち(細菌による変敗)を防ぐことから、灰持酒(あくもちざけ)ともいわれる。加藤清正が朝鮮から伝えたとの伝説があるが明らかではなく、鹿児島の地酒の出雲の地伝酒の製法が赤酒とほとんど変わらないことから、むしろ、昔近畿中心につくられたといわれる灰使用の黒貴の流れをくむと考えられる。細川藩時代には赤酒を御国酒(おくにざけ)と定め他国産の酒(旅酒)(たびざけ)を規制したので、肥後の赤酒の歴史が維新後まで長く続き、夏目漱石の『三四郎』にも「三四郎は熊本で赤酒ばかり飲んでいた」とみえる。昭和五八酒造年度の赤酒の生産は1,100kl程度で主に料理用として使用され、正月の屠蘇(とそ)や神事にも用いられる。赤酒の粕(かす)から取った粕取焼酎が薬酒づくりにも使われたようだが、地酒にも高濃度の焼酎が腐敗防止のため醪に加えられた例がある。
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