豚肉輸入の実態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 05:13 UTC 版)
実際のところ通関統計によると、為替の変動や海外の豚肉相場の変動にもかかわらず、制度が始まった1971年から50年以上にわたって日本に輸入されているほとんどの豚肉価格が、ヒレ肉・ロース肉もこま切れ・ミンチ用加工原料肉も同じ価格、すなわち分岐点価格(現行524円/キログラム)に近い値で推移している。従い高率関税である差額関税は徴収された実績はほとんどない。この点に関し専門家のみならず一部の生産者のあいだでは、同制度は最初から全く機能しないザル法であるとの指摘がある。 なお、基準輸入価格(546.53円/キログラム)に輸入諸経費や流通経費を加えれば、ハム・ソーセージなどの加工用原料肉も含めて、全ての輸入豚肉の卸売価格が、600円/キログラムを超える状態になるはずであるが、日本国内で流通している輸入豚肉の多くは、長年に渡り基準輸入価格(546.53円/キログラム)を下回っており、このことからも差額関税制度が形骸化していることによって、国内の輸入豚肉市場が、成り立っていることがうかがわれる。 また、基準輸入価格は、国産豚肉の上規格の価格をベースとした畜産経営の安定に関する法律(昭和三十六年法律第百八十三号)に定める安定上位価格と安定下位価格の中間価格で決められたという歴史がある。従い差額関税制度を厳格に遵守すると、輸入豚肉の価格が国産価格(上規格)より高くなる場合が想定され、安価なハム・ソーセージ・焼豚・惣菜向け加工用豚肉の輸入がストップするため、国内の豚肉価格の高騰を招くおそれがある。この点において、消費者の利益が大きく損なわれるという矛盾が、差額関税制度に存在する。
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