譲許停止(対抗措置)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/13 01:20 UTC 版)
「紛争解決に係る規則及び手続に関する了解」の記事における「譲許停止(対抗措置)」の解説
申立国は、自国の利益を侵害した相手国がパネル勧告を妥当な期間内に履行しない場合であって、当該相手国と代償について合意に至らない場合には、DSBの承認を得て譲許の停止等の対抗措置を実施することができる(DSU第22条2)。具体的には、「妥当な期間」内に履行のための措置が実施されなかった場合や、履行確認パネル・上級委員会によって、被申立国が勧告を十分履行していないことが確定した場合、申立国はDSBに対して、被申立国に対する対象協定に基づく譲許その他の義務の停止(対抗措置)を申請することができる(DSU第22条2)。 ただし、対抗措置の承認にあたっては、対抗措置の分野・程度に関する原則が定められており、紛争分野(セクター)と同一の分野での措置を優先することや、「無効化・侵害」の程度と同等のものであること等が条件となっている(DSU第22条3(a)、第22条4)。一方、同一分野での譲許その他の義務の停止ができない、あるいは効果的でないと認める場合には、同一の協定その他の分野に関する譲許その他の義務の停止を試みることができることとなっている(DSU第22条3(b))。更に、同一の協定その他の分野に関する譲許その他の義務を停止できない、あるいは効果的でなく、かつ、十分重大な事態が存在すると認める場合には、その他の協定に関する譲許その他の義務の停止を試みることができる(DSU第22条3(c))。特に後者は、「クロス・リタリエーション」と呼ばれ、例えば、知的財産について規定しているTRIPS協定違反の措置に対抗して、GATTに係る関税の譲許を停止する対抗措置をとる例が挙げられる。このクロス・リタリエーションは、WTO紛争解決手続における特徴の1つとされており、WTO協定が、物品の貿易だけでなく、サービス貿易や知的財産権の貿易についても規律の対象とすることとなったことに伴って導入されたものである(ただし、その特則として政府調達協定20条3は「クロス・リタリエーション」を禁止しており、同協定以外の協定に関する紛争によって政府調達協定の譲許その他の義務を停止することはできず、また、政府調達協定に関する紛争によって同協定以外の協定の譲許その他の義務を停止することはできないとされている。)。なお、承認申請された対抗措置の内容・程度について疑義のある場合、被申立国はその妥当性を判断するために仲裁を要請することができる(DSU第22条6)。仲裁が行われた場合、仲裁の裁定が出された後に、その内容を踏まえて再度対抗措置の承認申請が行われ、DSBにおいてネガティブ・コンセンサス方式によって承認されることとなる(DSU第22条7)。
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