調節エレメントとタンパク質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 23:47 UTC 版)
「選択的スプライシング」の記事における「調節エレメントとタンパク質」の解説
スプライシングはトランスに作用するタンパク質(抑制因子と活性化因子)とpre-mRNA上に存在してシスに作用する調節部位(サイレンサーとエンハンサー)によって調節される。しかし、スプライシング因子の影響はしばしば位置依存的であることには留意すべきである。つまり、イントロンのエンハンサーエレメントへ結合した際にスプライシング活性化因子として働くスプライシング因子が、エクソンのスプライシングエレメントに結合した際には抑制因子として機能する場合もあり、逆もまた然りである。pre-mRNA転写産物の二次構造も、スプライシングエレメントどうしを結び付けたり、スプライシング因子の結合エレメントを覆い隠したりといった形でスプライシングを調節する役割を持つ。これらのエレメントは、さまざまな条件下でスプライシングがどのように起こるかを指示する「スプライシング・コード」を形成している。 pre-mRNA上に存在するシス作用RNAエレメントには2つの主要なタイプが存在し、それらには対応するRNA結合タンパク質が存在する。スプライシングサイレンサーはスプライシング抑制タンパク質が結合する部位であり、近接する部位がスプライスジャンクションとして利用される可能性を低下させる。これらはイントロン自身に位置していることもあり(イントロン性スプライシングサイレンサー、ISS)、隣接するエクソンに位置していることもある(エクソン性スプライシングサイレンサー、ESS)。これらの配列は多様であり、結合するタンパク質の種類もまた多様である。スプライシング抑制因子の多くは、hnRNPA1やポリピリミジントラクト結合タンパク質(PTB)などのhnRNPである。スプライシングエンハンサーはスプライシング活性化因子が結合する部位であり、近接する部位がスプライスジャンクションとして利用される可能性を高める。これらもまた、イントロンに位置するもの(イントロン性スプライシングエンハンサー、ISE)とエクソンに位置するもの(エクソン性スプライシングエンハンサー、ESE)がある。ISEとESEに結合する活性化タンパク質の大部分は、SRタンパク質ファミリーのメンバーである。これらのタンパク質はRNA認識モチーフとアルギニンセリンリッチドメイン(RSドメイン)を含んでいる。 一般的に、スプライシングはコンテクストに依存した様式で決定される。特定のシス作用RNAエレメントの存在は、ある場合には近接部位でのスプライシングの可能性を増加させるが他の場合では可能性を低下させることもあり、その効果はコンテクストに依存する。スプライシングを調節するコンテクストには、pre-mRNA上の他のRNA配列特徴の存在によって決定されるシス作用コンテクストと、細胞の条件によって決定されるトランス作用コンテクストが含まれる。例えば、一部のシス作用RNAエレメントは、複数のエレメントが同じ領域に存在するときにのみスプライシングに影響を与える。他の例としては、シス作用エレメントはその細胞でどのタンパク質が発現しているか(例えば神経型PTBか非神経型PTBか)によってスプライシングに反対の影響を与える。スプライシングサイレンサーとエンハンサーの適応的意義について研究がなされており、ヒトの遺伝子では新たなサイレンサーを生み出したり既存のエンハンサーを破壊することを防ぐ強い選択がかかっていることが示されている。
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