観客研究とジャンル研究・1990年代以降
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 21:20 UTC 版)
「フェミニスト映画理論」の記事における「観客研究とジャンル研究・1990年代以降」の解説
しかし1990年頃を境に、映画研究におけるフェミニズム批評と精神分析の協働は急速に勢いを失った。精神分析的手法がもつ「非歴史性」が逆に女性の抑圧構造を正当化してしまうといった批判が行われ、また「まなざし」の構造を男性の性衝動と密接に関連づけるフロイト以来の分析手法では、「見つめる側」としての女性の欲望や主体性をうまく説明できず「女性不在の理論」を導いてしまうことが疑問視されたためである。 代わりにフェミニスト映画理論の分野で注目されるようになったのは、マルヴィが提唱していた「観客(スペクテイター)」研究である。 この中でとくに影響が大きかったのは、ジェーン・ゲインズが発表した論文「白人の特権とまなざしの関係」(1988)や、現代文化研究者・活動家のベル・フックスによる著書『ブラック・ルックス:人種と表象』(1992)、ローラ・ヤング『暗闇の恐怖』(1996)などである。彼らは、マルヴィが「女性観客」というとき「中産階級の白人女性」を当然の前提としていたことを厳しく批判して、性・人種の多様性を取り込んだフェミニスト映画理論の更新を訴えた。 この頃から、アメリカで広く普及した大学の映画学科で博士号を取得する黒人・アジア系の女性研究者も登場するようになり、たとえばマルヴィの議論の前提となっていた「受け身の女性観客」というイメージをしりぞけて、黒人女性らの主体的な役割を強調するジャクリーヌ・ボボのような研究も現れた。
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