複数個の相関係数の同等性の検定と母相関係数の点推定
例題:
「表 1 に示す 5 個の標本相関係数について同等性の検定を行い,もし同等とみなせるならば母相関係数の点推定値を求めなさい。」
標本の大きさ | 標本相関係数 |
---|---|
10 | 0.658 |
16 | 0.285 |
8 | 0.569 |
29 | 0.427 |
36 | 0.374 |
- 前提
- 帰無仮説 H0:「母相関係数は全て等しい ρ1=ρ2=...=ρk=ρ」
- 対立仮説 H1:「母相関係数は異なる(帰無仮説の等号が少なくとも一つは成り立たない)」。
- 有意水準 α で両側検定を行う(二つの相関係数の差の検定の場合には片側検定も可能)。
- 第 i 標本のケース数および標本相関係数 を ni,ri とし,Vi=(ni - 3)とする。
- k 個の標本相関係数の Z 変換値を Zi とする。
表 2.複数個の相関係数の同等性の検定と母相関係数の点推定 ni ri Vi Zi Vi Zi Vi Zi2 10 0.658 7 0.78928 5.52495 4.36072 16 0.285 13 0.29312 3.81050 1.11692 8 0.569 5 0.64604 3.23021 2.08686 29 0.427 26 0.45622 11.86177 5.41160 36 0.374 33 0.39307 12.97116 5.09852 合計 84 2.57772 37.39860 18.07461 - 次式により,検定統計量 χ20 を求める(ΣViZi2,ΣViZi,ΣVi は,表 2 の合計行にある)。
例題では,χ20 = 1.42396 となる。
- χ20 は,自由度が k - 1 の χ2 分布に従う。
例題では,自由度 4 の χ2 分布に従う。
- 有意確率を P = Pr{χ2 ≧ χ20}とする。
χ2分布表,またはχ2分布の上側確率の計算を参照すること。
例題では,自由度 4 の χ^2 分布において,Pr{χ2 ≧ 9.49}= 0.05 であるから,P = Pr{χ2 ≧ 1.42396}> 0.05 である(正確な有意確率:P = 0.84002)。
- 帰無仮説の採否を決める。
例題では,有意水準 5% で検定を行うとすれば(α = 0.05),P > α であるから,帰無仮説を採択する。すなわち,「母相関係数は異なるとはいえない」。
同等性の検定で帰無仮説が採択されたときには,k 個の標本相関係数に基づいて 1 個の母相関係数を推定できる。
母相関係数の点推定は以下のように行う。
- 次式により,k 個の標本相関係数の Z 変換値の重み付け平均値 Zm を求める(ΣViZi,ΣVi は,表 2 の合計行にある)。
例題では,Zm = 0.44522 である。
- フィッシャーの Z 変換の逆変換(次式)により,母相関係数の点推定値 f -1 ( Zm ) を得る。
例題では,点推定値は f -1 (0.44522) = 0.41796 となる。
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