衝突盆地とクレーター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/20 15:05 UTC 版)
水星のクレーターの直径の大きさや形状は、小さなお椀状のものから多重環型衝撃盆地が見られる数百kmにもわたる衝突盆地までさまざまである。これは比較的新しい光条クレーターから低変がかなり進んだクレーターの残骸のような状態まで、低変を起こしながら存在している。水星で見られるクレーターは月のクレーターと少し異なっている。水星の地表面での重力の大きさが月面上の2.5倍であるために、月では、水星に比べて噴出物ブランケットの量がとても少ない。 最も大きく、よく知られているのが、巨大なカロリス盆地である。その直径は1550kmにも及ぶ。また、大きさの観点から、カロリス盆地と比べて同じくらいの大きさになりそうなものとして、シナカス盆地 (仮称) の存在が仮定されてきていた。これは、マリナー10号が映し出せなかった半球部分を地球上から低解像度で観測して仮定したものである。しかし、メッセンジャーからの画像からは、それに対応する地形が観測されていない。カロリス盆地を形成した衝撃の大きさは非常に大きく、その影響は全球規模で確認できる。また、その衝撃で溶岩噴火が誘発され、隕石孔を取り巻くように高さ2km以上の同心円のリングが形成された。カロリス盆地の対蹠点には、小高い部分と溝のような部分からなる珍しい巨大な地帯があり、「奇妙な地形」と呼ばれることがある。カロリス盆地を形成した衝撃の衝撃波が水星全体を駆け巡り、それが盆地の対蹠点 (180°離れた点、すなわち真裏の地点) に集中したとき、高い圧力がかかって地表面が割れたというのがこの地形の成り立ちとして有力な仮説である。他には、噴出物がカロリス盆地の対蹠点に集まった結果この地形が形成されたという説もあるが、こちらはあまり有力ではない。さらに、カロリス盆地が形成される間に、盆地の周囲に同心円状に浅い凹地が形成されたように見える。この凹地はのちに、平原に覆われる。(下図参照) 全体的に見ると、探査機によって映し出された部分から約15の衝突盆地が確認されている。この他に特徴的な盆地として、多重環型衝突盆地を持つ幅400kmのトルストイ盆地が挙げられる。噴出物ブランケットが盆地の縁から500km離れたところまで広がっている。また、盆地の底の部分には平原地で覆われている。ベートーベン盆地もまた、同じくらい遠くまで砕屑物が広がっており、リム直径で625kmである。 月面上と同様に、水星上で新しく形成されたクレーターにはっきりと明るい光条が見える。これらはクレーターが形成された時に放出される岩屑の堆積物によって形成されている。比較的新しい間は、より明るい傾向にあるが、これはその周りのより昔に形成された地形よりも宇宙風化作用が弱いせいである。いわゆる”奇妙な地形”はカロリス盆地が形成された時の衝撃で、カロリス盆地の対蹠点に形成された。
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