行軍病
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 02:35 UTC 版)
行軍によって多発する傷病をいい、また行軍によって発する傷病の総称でもある。その主なものをあげると、靴傷、鞍傷、汗疱疹、会陰擦傷、騎骨、鶏眼、胼胝腫、足腫、過労性筋炎、過労性腱鞘炎、過労性脛骨骨膜炎、頭部湿疹、喝病、雪盲、凍傷などである。行軍による疲労、疾病による兵力の減殺は小さくないが、行軍は季節、天候、進路の難易を考慮して行うことはできず、そのための平時の鍛錬が重要であるとされた。すなわち距離、負担量を徐々に増加して行軍に習熟させ、体力、特に脚力、呼吸、血行機能を極致に至らせ、持久力を保持させるべきであるとされた。 靴傷(かしょう)は、行軍病のうち最も多い擦傷である。原因は靴に慣れていない、また靴の構造、品質の不良、寸法の不適合、靴下の不潔、靴下による皺襞の影響などであるとされた。平時は、軍事衛生上でも深い注意を払われないが、教育上その害は大きい。1930年、陸軍の統計によれば練兵休以上の新患は1768名、総治療日数は9613日で、就業患者は多数である。戦時、歩兵の行軍力が減じると、戦闘に臨んで機会が失われ、目的は達成されないから予防が重視された。
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