自家培養皮膚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/24 08:48 UTC 版)
永久生着が得られることが最大の利点であるが、必要となった時点で自分自身の細胞を採取し作成するため、使用できるまである程度の期間を要するという欠点がある。将来的には、あらかじめ自分の細胞を保存しておき不慮の事態に備える、といったシステムを構築することでこの欠点を克服できると考えられる。自家培養表皮の場合、その使用条件として、創に真皮成分が残存している必要がある。これは、表皮は真皮上でしか生育できないという理由による。そのため、深い創の場合、何らかの方法で真皮成分を再構築したうえで適用することが要求される。一方、自家培養真皮では、真皮組織が再構築されるが表皮成分は含まれていないため、創閉鎖には皮膚移植(培養表皮移植でも可)が必要となる。これらのことから、創閉鎖を行ううえで最も理想的なものは、表皮と真皮を同時に培養して一体化した複合型培養皮膚であるといえる。すなわち、3度熱傷のような皮膚全層が欠損する創においても、一度の適用で治療が完了するという利点を有している。ただし、現在作成可能な複合型培養皮膚は、従来の分層植皮術(注2)で採取される皮膚片の代替物であり、広範囲熱傷において移植皮膚の不足が深刻な場合にのみ有効であると考えられる。分層植皮片と同様、色素沈着や収縮、硬化などがみられるため、特に整容面を重視するような場合には適さない。 (注2)従来の皮膚移植術は、大きく分けて2つに分類され、表皮と真皮全てを移植する全層植皮術と、表皮と真皮の一部(採取部に真皮を残す)を移植する分層植皮術とに分けられる。前者の移植皮膚は、術後の色素沈着が少なく、汗腺や毛包などの皮膚付属器が保たれ、健常皮膚と同様の柔軟性、弾力および伸縮性が保持される(※)。後者では皮膚付属器は含まれず、移植皮膚の色素沈着や収縮、硬化がみられる。しかしながら、移植皮膚の生着率の面からは組織量の少ない後者の方が有利である。また、真皮組織を残して採取することで採取部の再上皮化が起こり、同じ部位から複数回採取できることなどから、熱傷等の救命を目的とした創閉鎖には分層植皮術が用いられる。 (※)いわゆる全層植皮術には、Wolfe-Krauseの全層植皮術と含皮下血管網全層植皮術(PSVN植皮術)があるが、完全に皮膚全層を移植しているのは後者である。前者は皮膚片作成の過程で真皮の一部を削っているため、いわば厚目の分層植皮術に等しく、術後の色素沈着、二次的収縮および硬化といった機能的障害がみられることが多い。
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