脱離基
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/01 21:44 UTC 版)
脱離基 (だつりき、英: leaving group) はヘテロリシスで開裂された原子団のうち電子対を持つ側の原子団のこと。水 (H2O)、アンモニア (NH3)、二酸化炭素 (CO2)、アルコール (ROH)は代表的な中性脱離基であり、Cl−、Br−、I−のようなハロゲン化物イオンやトシル基 (TsO−) のようなスルホン酸イオンは代表的なアニオン性脱離基である。原子団の脱離のしやすさは求核置換反応で重要となり、カチオン性の原子団は求電子性である事から脱離基とは見なされない。実際、求電子置換反応で脱離するものの多くはプロトン (H+) である。

脱離基の脱離しやすさは共役酸のpKaと関係があり、小さなpKaを持つほどよい脱離基(脱離しやすい脱離基)として働く場合が多い[注 1]。よって強塩基であるアルコキシド (RO−)、水酸化物イオン (HO−)、アミドイオン (R2N−) は脱離しにくい基である。
脱離基の一覧。表の下に行くほど脱離しにくい傾向がある[1]。 | |
---|---|
*R-N+ 2 |
ジアゾニウム塩 |
R-OR'+ 2 |
オキソニウムイオン |
R-OSO2C4F9 | ノナフルオロブタンスルホナート |
R-OSO2CF3 | トリフルオロメタンスルホナート |
R-OSO2F | フルオロスルホン酸エステル |
R-OTs, R-OMs, etc. | トシラート, メシラート, その類似体 |
R-I | ヨウ化物 |
R-Br | 臭化物 |
R-OH+ 2 |
(アルコールの共役酸) |
R-Cl | 塩化物, 酸塩化物 |
R-OHR'+ | エーテルの共役酸 |
R-ONO2, R-OPO(OH)2 | 硝酸エステル, リン酸エステル, 無機酸エスエル |
R-SR'+ 2 |
スルホニウム塩 |
R-NR'+ 3 |
第四級アンモニウム塩 |
R-F | フッ化物 |
R-OCOR | エステル,酸無水物 |
R-NH+ 3 |
アンモニウム塩 |
R-OAr | フェノキシド |
R-OH | アルコール, カルボン酸 |
R-OR | エーテル, エステル |
ヒドリド (H-)、アルキルアニオン (R3C−)、アミドイオン (R2N−)は不安定なのでふつう脱離基として働くことはない。
関連項目
注釈
出典
- ^ Smith, March. Advanced Organic Chemistry 6th ed. (501-502)
脱離基
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/21 14:29 UTC 版)
脱離基のアニオンとしての安定性や、炭素原子との結合の強さも反応速度に影響する。脱離基の共役塩基が安定であるほど、結合の共有電子対を持って行きやすい。ゆえに、脱離基の共役塩基が弱く、それに対応する酸が強いほど、好ましい脱離基であると考えられる。ゆえに、よい脱離基の例としてはハロゲン化物(炭素との結合が強すぎるフッ素を除く)やトシル塩がある。しかし、HO−やH2N−などはよい脱離基とはいえない。
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