細胞外で増殖できない理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/22 05:12 UTC 版)
「偏性細胞内寄生体」の記事における「細胞外で増殖できない理由」の解説
偏性細胞内寄生体が細胞外で増殖できない理由は、その微生物によって異なり、また一部のものについてはその理由が解明されていない。ただしこれまで判っている範囲では、(1).増殖に必要な代謝能力の一部を持たず、宿主に依存している、(2).細胞外では不安定ですぐに死んでしまう、という二つのが主な理由であると考えられている。 ウイルスウイルスは核酸とタンパク質のみからなる微小な感染性粒子で、それ自身は極めて限られた能力、遺伝情報しか持たない。上記(1)の理由に相当し、増殖に必要なエネルギー産生やタンパク質合成など、大部分の代謝機構を宿主に依存している。 クラミジアクラミジアは、上記(1)の理由に相当し、自分自身がエネルギー産生系を持たないため、感染した宿主細胞が作り出したATPを利用して初めて各種の代謝を行うことができる。 ファイトプラズマファイトプラズマは上記(1)の理由に該当する。アミノ酸・脂肪酸の一部を合成できないためである。 リケッチアリケッチアはクラミジアとは異なり、エネルギー産生系をはじめ増殖に必要な機構を全て備えている。このためリケッチアが偏性細胞寄生性である理由はまだ完全には判っていないが、少なくとも上記(2)の理由がその一因と考えられている。リケッチアの細胞膜は、他の生物の細胞膜とは大きく異なっており、さまざまな成分の透過性が極めて高い。このため、感染した細胞内で宿主の細胞質からリケッチア内部に各種栄養が到達しやすい反面、細胞外ではリケッチア内の各種成分が容易に漏出し、細胞外で生存できないと考えられている。 コクシエラコクシエラは、以前はリケッチアの一種に分類されていたが、他のリケッチアとは異なり細胞外でも比較的長期に生存可能であることと、その遺伝子がむしろレジオネラ(通性細胞内寄生体の一種)に近いことが明らかにされたため別のグループに分類された。その偏性細胞内寄生性の理由はまだ明らかになっていない。 トキソプラズマ、トリパノソーマ、リーシュマニア偏性細胞内寄生性の理由はまだ明らかになっていない。
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