筋肉とミトコンドリア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 14:24 UTC 版)
「ミトコンドリア」の記事における「筋肉とミトコンドリア」の解説
速筋線維はミトコンドリアが少なく、グリコーゲンが比較的多いので白く見える。解糖系でATPを産生し、その結果として蓄積したピルビン酸は、乳酸デヒドロゲナーゼで乳酸へと変換され易い。このような嫌気的な糖分解によるATP産生であれば、わざわざ外部から酸素を取り込む必要も無く、速くATPを作り出せる。この事もあり、乳酸性閾値よりも高い運動強度では、速筋線維が多く使われるようになる。しかしながら、この方法では長時間の運動は続けられないという欠点が有る。 これに対して、遅筋線維や心筋は、ミオグロビンが多いので赤く見え、酸素を利用し易い環境を備えている。赤色の筋肉では、乳酸を作るよりは、解糖系の産物であるピルビン酸をミトコンドリアのTCAサイクルへ、解糖系で生成したNADHもミトコンドリアに渡され、ATPを合成して、運動のために使っている。この方式であれば、乳酸などが蓄積しないので、運動強度が低い場合は遅筋線維が主として働いている。 なお、速筋線維で発生した乳酸は、血液を介して肝臓に運ばれ、コリ回路でATPを消費してグルコースの再生に使われる事は、よく知られている。 これ以外に、乳酸デヒドロゲナーゼは、乳酸をピルビン酸に戻す逆反応も触媒できる。遅筋線維や心筋では、外部から取り込んだ乳酸を、ピルビン酸に戻して、ミトコンドリアのTCAサイクルに投入する事も行っている。 いずれにしても、主に速筋線維で蓄積し易い乳酸の代謝には、細胞膜を通過して他の細胞へと乳酸が輸送される必要がある。この乳酸の輸送は、乳酸だけでなくピルビン酸などの輸送にも関わるため、モノカルボン酸の輸送担体(英語: Monocarboxylate Transporter (MCT))と呼ばれている。
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