突発性異常
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 08:55 UTC 版)
突発性脳波異常は、棘波ならびに鋭波と突発性律動波とに大別される。 棘波(spike) 棘波は突発性脳波異常の最も基本的な形であり、持続が20msec以上70msec未満すなわち1/50~1/14秒で急峻な波形をもち、背景脳波から区別される。前述のように棘波はその出現様式によって散発性と律動性にバースト(群発)を形成することがある。棘波は皮質ニューロンの過同期性発火をあらわすものである。てんかん患者の場合は棘波成分は最も特異的な発作発射と考えられている。孤立性の棘波がかなり長い間隔をおいて散発するばあいは、それはてんかん原焦点の局在を示すだけであり臨床症状は出現しないのが普通である。 棘徐波複合(spike and wave complex) 棘波に持続200~500msecの徐波が続いて現れる場合は棘徐波複合という。棘徐波複合の発生機序に関しては不明であるが徐波は抑制過程を現し、棘波に表現される強い興奮過程の発現に対して、ただちにこれを抑制しようとする生体の防御機構が働くために棘波に続いて徐波が出現するという考え方もある。棘波単独で出現するよりもてんかん原損傷が広範であることが多い。局在性棘徐波複合、全般性(広汎性)棘徐波複合、多棘徐波複合などが知られている。局在性棘徐波複合は焦点性を示す。全般性棘徐波複合には欠神発作の3Hz棘徐波律動などの有名な波形も含まれる。多棘徐波複合にはミオクロニー発作との関連も知られている。 鋭波(sharp wave) 棘波に似ているが、持続が70msec以上200msec未満すなわち1/14~1/5秒の波形を鋭波という。棘波との意義の大差はない。なぜ持続が棘波より長いかということにかんしては棘波に比べてニューロンの同期が不完全であるという考え方がある。同期が不完全になるには2つの機序が知られている。第1にはその部位が原発焦点であっても、空間的にてんかん原損傷部位が広い場合がある。この場合は広い領域にある多数のニューロンが同期するのに鋭波よりも時間がかかると考えられる。第2に原発焦点が対側半球、皮質深部、皮質下諸核などにあって、そこから伝播してくる神経衝撃によって当該皮質部位に鋭波が誘発される場合は、神経衝撃の時間的分散が増大し、持続が長くなると考えられる。 鋭徐波複合(sharp and slow wave complex) 鋭波に徐波が引き続いて形成される場合は鋭徐波複合という。鋭徐波複合は比較的広いてんかん原損傷が存在する部位から記録される。 突発律動波(paroxysmal rhythmic activity) 棘波や鋭波を含むが波形は、散発性、孤発性に出現する場合も律動的に反復する場合も脳波的には発作発射である。棘波や鋭波を含まない場合は振幅が大きく、背景脳波から際立った律動性群発(律動性バースト)をなして出現する場合は発作発射とみなされる場合があり突発律動波という。3Hz、6Hzの徐波の群発、10Hzの高振幅の群発、速波の群発などが知られている。
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