空間論の影響と現在の課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 09:39 UTC 版)
「地域社会学」の記事における「空間論の影響と現在の課題」の解説
1980年代までの日本の地域社会研究は、多くの社会科学研究がそうであったように、基本的には当時の冷戦構造の対立図式を引き継いでおり、つまりは、機能主義的な近代化論とマルクス主義の対立に緊縛されていた。 しかし、80〜90年代以降は、新都市社会学、空間論的転回の影響を受け、それまでの近代化論的研究法、マルクス主義的研究法の双方の再検討が促されることになった。ただし、この議論の転換はまだ完了しておらず、これらの影響を受けた都市社会論、地域社会論は多様化し、実証研究との接点も拡大しており、このなかで新たな地域社会学の理論的パラダイムを創り出すことが求められている。 このなかで注目されているのが「場所論」であり、場所はアイデンティティと共同性の源泉であるが、それが閉鎖性ではなく開放性のなかで、いかに形成されていくのかが焦点となっている。以上のような理論的動向を背景として、今日では、市民参加や「まちづくり」論など、都市的な公共性と共同性のありように焦点が当てられるようにもなっている。 また、マイナーではあるが、地道に量が重ねられているのが、地方の都市と農村を合わせた地方都市圏の研究である。地方都市圏の研究がメジャーにならないのは、地方圏の研究をすべき社会学の大学院、特に博士課程が地方には少ないことや、優秀な研究者がステータスやレベルが高い大都市の大学に移ることが挙げられる。 さらに、個々の地域問題に対応する形での研究も数多く蓄積されており、とりわけ近年の防犯、防災、福祉、教育、自治、観光等における「地域」への関心の高まりを背景にして、地域社会学の果たしうる社会貢献の今日的可能性が広がっている。
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