科学理論の交代における矛盾の役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 09:43 UTC 版)
「矛盾」の記事における「科学理論の交代における矛盾の役割」の解説
科学史家の板倉聖宣は基本理論の交代における矛盾の役割の重要性を明らかにした。 板倉は古典力学、電磁気学、量子力学の理論形成を研究し、「理論の交代が起こるのは古い理論の内部に矛盾が出現することである」とした。理論の内部矛盾が認識されることで理論は危機に陥る。そしてその矛盾をのりこえようとする結果として形成されるのが新理論であると主張した。古い理論の内部矛盾の存在は、その理論に深くコミットした人ほどより深刻にとらえられ、顕在化してくるという特徴を持っている。従って新しい理論はしばしば古い理論の見かけをもっている。古い理論の敵は説明できないデータの存在でもなく、競合する新理論の出現でもなく、矛盾の存在なのであると板倉は主張したたとえば、「コペルニクスは天動説の抱える内部矛盾を発見し、それを解決するためにはどうしても天体の回転の中心を地球から太陽にしなければならなかったのだ」としている。 物理学者の武谷三男は「量子力学においては波動と粒子という対立した現象形態が「状態」という本質的な概念に統一される。系が空間に限定されているためには(すなわち粒子であるためには)、異なった波長の多数の波を足し合わせて波束を作らなければならない(波の性質)。かくて空間的に限定された系は自己の中に矛盾を持ち、この矛盾が系の自己運動となる」と「量子力学には将来止揚されるべき矛盾に充ちている」と述べた。 パラダイム理論を唱えたトマス・クーンは、「ある個人がいかにして集積されたすべてのデータに秩序を与える新しい方法を発明するかは、ここでは測り知れないものであり、永遠に不可知にとどまるであろう」として、科学者による理論の選択は、もともと合理的説明はできないのであって、宗教的回心のようなものだと主張したが、板倉聖宣は、理論交代の必然性を「理論内部の矛盾による自滅とそののりこえ」によって説明できると批判した。 「科学的認識の成立条件」も参照
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