福岡海の中道大橋飲酒運転事故
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福岡海の中道大橋飲酒運転事故(ふくおかうみのなかみちおおはしいんしゅうんてんじこ)とは、2006年(平成18年)8月25日に福岡市東区の海の中道大橋で、市内在住の会社員の乗用車が、飲酒運転をしていた当時福岡市職員の男(当時22歳)の乗用車に追突され博多湾に転落し、会社員の車に同乗していた3児が死亡した事故。
注釈
- ^ 次男・長女は事故後に救出・搬送されたが、搬送先の病院で死亡が確認された[1]。車内に取り残された長男は3時間後に車と共に引き揚げられたが、搬送後に死亡が確認された[1]。
- ^ a b 検察官は控訴審で「事故現場は歩道側に傾斜があり、夜間は極端に視界が悪くなる。脇見運転をしていたら現場までたどり着けない」と指摘した[30]。福岡高裁 (2009) もこの検察官主張を認め「仮に脇見運転をし続け、進路調節を怠ればハンドルが左側に流れ、左側縁石に接触する。被告人は前を見て運転していたことが認められ、『脇見運転をしていた』とする供述は客観的事実に反する」と認定した[31]。
- ^ 控訴審で弁護人は「被害者は居眠り運転しており、後方から来ていた被告人Aの車を発見するのが遅れ、驚いて急ブレーキをかけたことで両車両が急接近した。両方の車に原因がなければ衝突・海上転落は起きなかった」と主張した[16]。
- ^ ただし、福岡高裁 (2009) は「自首の成立自体は認められるが、現場橋上に破損して走行不能となった被告人Aの車が停車しており、被告人Aが犯人であることはいずれ発覚することが必至だったため、量刑上さほど重視することはできない」と認定した[19]。
- ^ 福岡地裁 (2008) は「被告人は事故前に相当な量の飲酒をして運転しているが、事故現場に至るまでにアルコールの影響によるとみられる蛇行運転などはなく、狭隘な道路も含めて運転操作ができていたほか、事故直前に回避行動を取っていた。つまり道路・交通状況に応じた運転操作を行えており、事故当時も『正常な運転が困難な状態だった』とまではいえない。高速で走行したことや長時間の脇見は被告人が正常な運転が困難な状態にあったことを疑わせるが、本件当時の道路状況・交通状況などから判断すれば必ずしも異常とはいえない』として、『被告人がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態にあったと認めることはできず、予備的訴因の業務上過失致死傷・道路交通法違反(酒気帯び運転)の成立にとどまる」と判断した[14]。その上で「被告人の『漫然と脇見運転をしていた』とする供述は信用性があるため、『脇見運転が事故原因』と判断できる」と指摘した[20]。
- ^ 福岡地裁 (2008) は「3児は、いずれも両親から最大限の愛情を注がれ、宝物のように育てられて幸せで楽しい日々を送っていただけでなく、まさにこれから夢や希望に満ち溢れた人生を迎えようとしていた矢先、理不尽にもわずか4歳11か月、3歳3か月及び1歳3か月という短い一生を終えなければならなかったものであって、誠に哀れと言うほかはない。また、生き残った夫妻が本件事故によって味わった驚愕、恐怖、苦痛は計り知れず、本件事故直後に3児の命を救うべく海中で必死の救助活動に当たる中で夫妻が体験した不条理で残酷な極限的状況には想像を絶するものがある。」と判決言い渡しで述べている[24]。
- ^ 福岡高裁 (2009) は「被告人Aが被害車両に間近に迫るまで(8秒程度)にわたり、被害車両の存在を認識できないまま進行した理由は合理的に説明すると『被告人Aは基本的には前方に視線を向けて運転していたが、正常な状態なら存在を認識できるはずの被害車両を認識できない状態で運転していた』としか考えられない」と指摘し[33]、その理由について検討した上で「被告人Aは飲酒により脳の機能が抑制され、目が正常に物体を追従することが困難となり、視覚探索能力が低下していた。これにより前方注視が困難な状態で運転しており、直前に迫るまで被害車両を認識できなかった」と認定した[34]。
出典
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- ^ 福岡地裁 2008, p. 38.
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- ^ 「福岡3児死亡事故:飲酒追突の福岡市職員逮捕 長男死亡、犠牲3人に」『読売新聞』読売新聞西部本社、2006年8月26日。2009年5月19日閲覧。オリジナルの2009年5月19日時点におけるアーカイブ。
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- ^ a b 「福岡3児死亡事故:「3児の命と向き合って」控訴審で両親、涙の訴え」『読売新聞』読売新聞西部本社、2009年1月30日。2009年5月19日閲覧。オリジナルの2009年5月19日時点におけるアーカイブ。
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- ^ 福岡高裁 2009, pp. 9–11.
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- ^ 最高裁第三小法廷 2011, p. 1.
- ^ a b 「福岡・3児死亡飲酒事故、懲役20年判決確定へ」『asahi.com』朝日新聞社、2011年11月2日。2011年11月2日閲覧。オリジナルの2011年11月2日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「3児死亡飲酒事故10年<1> 重い命 罪問い続け 苦悩の日々 終わりなく」『西日本新聞』西日本新聞社、2016年8月21日。2020年6月7日閲覧。オリジナルの2020年6月7日時点におけるアーカイブ。
- ^ 福岡の3児死亡飲酒事故が和解 受刑者側が謝罪、賠償 日本経済新聞 2012年10月18日
- ^ 福岡の3児死亡飲酒事故で和解 受刑者ら謝罪、賠償 共同通信 2012年10月17日
- ^ “日本を変えた!あの重大事件の新事実 〜衝撃事件の現場に知られざるヒーローがいた〜”. TBS. 2019年12月9日閲覧。
- 1 福岡海の中道大橋飲酒運転事故とは
- 2 福岡海の中道大橋飲酒運転事故の概要
- 3 民事訴訟
- 4 脚注
- 5 外部リンク
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