社会的・法的責任
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 09:20 UTC 版)
船長は、全ての乗船者の避難が完了してから最後に退船するか、全ての乗船者の避難ができないときは、たとえ自分が助かることができたとしても退船せずに船と運命を共にするという伝統がある。社会的文脈の中で、船長は社会的規範としてこの責任を負わなければならないと感じるだろう。海事法では、船の状態がどのようなものであっても船主の責任が最優先されるので、船を放棄することはサルベージの権利の性質を含めて法的な結果をもたらす。従って、船が遭難したときに、船長が船を放棄して避難したとしても、船長が不在の間の出来事についても船長は一般的に責任を負うことになり、船の危険性が容認されるまでは船に戻らざるを得ない。 遭難した船を船長が見捨てることが犯罪とみなされることがある。2012年のコスタ・コンコルディアの座礁事故において、フランチェスコ・スケッティーノ船長は乗客よりも先に避難した。その行為が広く非難されただけでなく、乗客を見捨てた罪で1年、難破事故を起こした罪で5年、犠牲者を過失致死した罪で10年の、計16年の実刑判決が下された。船長が船を見捨てることは、スペイン、ギリシャ、イタリアで何世紀にもわたって海事犯罪として記録されてきた。韓国の法律では、船長は一番最後に避難することが義務付けられている。フィンランドの海事法では、船長は遭難した船に乗っている全員を救うために全力を尽くさなければならず、船長の命が直ちに危険にさらされない限り、救えるという合理的な希望がある限り、船を離れてはならないと定めている。日本では、制定当初の船員法第12条において、緊急時の船長の最後退船の義務が規定され、違反者には懲役刑が科せられていた。これは1970年に改正され、最後退船義務は廃止された。アメリカでは、船を捨てることを違法行為とする明確な法律はないが、船長は、何世紀にもわたって受け継がれてきたコモンローの判例を包含する過失致死などの罪に問われる可能性がある。国際海事法上は、遭難した船を船長が見捨てることは、違法ではない。 日本海軍においては、撃沈された艦から生還した艦長はその多くが予備役に回されたり、左遷されるなど厳しい処分を受けた。例としては、赤城の青木泰二郎大佐、比叡の西田正雄大佐などがある。このこともあり、多くの大型艦の艦長は船と共に沈まざるを得なかった。
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