破壊的技術と優良企業の凋落
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 09:37 UTC 版)
「破壊的技術」の記事における「破壊的技術と優良企業の凋落」の解説
ある時期に市場をリードする優良企業が新技術への対応に失敗して地位を失う現象はイノベーション研究のテーマの一つである。例えばHenderson & Clark(1990)は、企業の組織構造は部品(モジュール)レベルの製品開発に特化されているがゆえに、製品アーキテクチャの変化をもたらすような新技術へは対応しづらくなると論じている。 だが、クリステンセンは、ハードディスクドライブ業界などにおいては、アーキテクチャの変化をもたらすような複雑な技術変化に問題なく対応できた優良企業であっても技術的には単純な新技術の対応に失敗して凋落する現象を観察した。優れた経営を行う企業がしばしば新技術への対応に失敗して凋落する理由として、クリステンセンは優れた経営を行っているがゆえに破壊的技術への投資が正当化されないからであると考えた。ここでいう優れた経営とは、顧客の声をよく聞き、それに丁寧にこたえることを指す。この優れた経営の推進が破壊的技術に対応する際には企業をジレンマに(イノベーションのジレンマ)陥らせるとクリステンセンは論じた。 なぜなら、以下のような理由があるからである。 企業は収益を高め顧客と投資家を満足させなければならないため収益性の低い案件には投資しにくい。破壊的技術はその初期の段階では新しく小規模な顧客しか得られないうえに、従来の価値基準では性能的に劣るために投資を正当化しづらい。また、「顧客の声をよく聞く」という主要顧客を対象とした調査方法では新たな顧客の需要をつかむことも難しい。 従来技術に対して最適化された組織の能力が状況が変化した際に足かせになってしまう。特に、インプットをアウトプットに変える組織的プロセスや投資案件の優先順位をつける際の価値基準は状況の変化に応じて容易に変えることはできない。
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