相対的芳香族性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/20 18:51 UTC 版)
Selected NICS values / ppm ピロール −15.1 チオフェン −13.6 フラン −12.3 ナフタレン −9.9 ベンゼン −9.7 トロピリウム −7.6 シクロペンタジエン −3.2 シクロヘキサン −2.2 ペンタレン 18.1 ヘプタレン 22.7 シクロブタジエン 27.6 観測される環電流の面から芳香族性を定量化することがこれまで数多く試みられてきた。DSE (diamagnetic susceptibility exaltation) と呼ばれる方法では、化合物の観測磁化率と置換基の加算性に基づいた計算値との差をΛと定義している。ベンゼンは明らかに芳香族性であり (Λ = −13.4)、ボラジン (Λ = −1.7) およびシクロヘキサン (Λ = 1.1) は非芳香族、シクロブタジエン (Λ = +18) は反芳香族である。 もう一つの測定可能な値は、リチウムと芳香族分子の錯体中のリチウムイオンの化学シフトである。リチウムは芳香環の面に対して配位する傾向にある。ゆえに、シクロペンタジエニルリチウム (CpLi) の化学シフトは−8.6 ppm(芳香族性)でありCp2Li-錯体では化学シフトは−13.1 ppmである。 どちらの手法も、環の大きさに依存した値であるため不利益を被る。NICS (nucleus-independent chemical shift) は、環内部に直接配置した仮想リチウムイオンの化学シフトを算出する計算手法である。この方法では、負のNICS値は芳香族を示し、正の値は反芳香族性を示す。 HOMA (harmonic oscillator model of aromaticity) と呼ばれるもう一つの手法は、完全な芳香族であると推定される最適値からの結合長の偏差平方(英語版)規格和で定義される。芳香族のHOMA値は1であり、非芳香族では値は0となる。全ての炭素系において、HOMA値は以下の式を利用して得ることができ、 H O M A = 1 − 257.7 / n ∑ i n ( d o p t − d i ) 2 , {\displaystyle \mathrm {HOMA} =1-257.7/n\sum _{i}^{n}(d_{\rm {opt}}-d_{i})^{2}\,,} 正規化値は257.7、nはCC結合の数、doptは最適化された結合長 (1.388 Å)、di は結合長の実験値あるいは計算値である。
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