皇輿全覧図とは? わかりやすく解説

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こうよぜんらんず〔クワウヨゼンランヅ〕【皇輿全覧図】


皇輿全覧図

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/09 13:56 UTC 版)

『皇輿全覧図』山東半島周辺
皇輿全覧図
各種表記
繁体字 皇輿全覽圖
簡体字 皇舆全览图
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皇輿全覧図』(こうよぜんらんず)は、中国清代康熙57年(1718年イエズス会士のブーヴェらが康熙帝に献上した、中国全土の地図[1]。中国最初の実測図[1][2]。『康熙図』などともいう[3]

背景・内容

明代末期万暦30年(1602年)のマテオ・リッチ坤輿万国全図』をはじめ、イエズス会士は中国に最新の世界地図を伝えていた[3]

清代康熙46年(1707年[4]康熙帝がイエズス会士のブーヴェレジスジャルトゥー中国語版らに中国地図の製作を命じた。背景として、1689年ネルチンスク条約[5]などを踏まえた国防上の必要性[6]、康熙帝の西洋数学への関心[5][7]フランス王立アカデミーにおける中国研究の高まり[5][6]などがあった。

以降、1708年から1717年の10年間にわたり、イエズス会士と中国人により測量旅行と製図が行われた[7]地図学の手法として、中国伝統の方格図法に代わり[1]三角測量・梯形投影法経緯線などが使われた[8][1][5]。レジスの測量隊は沿海地方チベットの先駆的調査をした[9][4]チョモランマ(エベレスト)の標高測定も行われた[4]マッテオ・リパ銅版製作を命じられた[10]

影響

本作は後世の中国地図の多くに影響を与え[6]、後継作の『雍正十排図』『乾隆十三排図』[11][4]、『古今図書集成』『大清一統志中国語版』所収の地図などに利用された[12]。ヨーロッパ諸国にも版本や調査報告が伝わり[13]、特にフランスのダンヴィル英語版の中国地図(デュアルド『中国誌』所収)に利用された[6][11]

江戸時代の日本にも『古今図書集成』などを介して伝わり、木村蒹葭堂・山田聯(山田慥斎)・高橋景保馬場貞由近藤重蔵らに受容された[6]北方探検で未踏だったサハリン北部の資料としても利用された[6]

現代では、尖閣諸島問題をめぐる日中間の議論でも参照されている[12][14]

伝本・研究

伝本は長らく失われていたが、20世紀に複数再発見された。1929年瀋陽故宮から再発見されると、金梁中国語版翁文灝フックスドイツ語版黒田源次らが研究を開拓した[15]。以降、中国内外に伝本が確認されている[15][8][10]。伝本は木版分域図と銅版連接図の二種に大別される[16]

成立経緯の史料として、檔案や『聖祖実録』、デュアルド『中国誌』、『イエズス会士中国書簡集』などがある[5]

関連項目

脚注

  1. ^ a b c d 大澤 2013, p. 378.
  2. ^ 海野 1970, p. 54.
  3. ^ a b 船越 1972, p. 61.
  4. ^ a b c d 船越 1972, p. 62.
  5. ^ a b c d e 澤 2015, p. 145f.
  6. ^ a b c d e f 船越 1972, p. 63.
  7. ^ a b 今村 2015, p. 24ff.
  8. ^ a b 皇輿全覧図』 - コトバンク
  9. ^ 松浦 2001.
  10. ^ a b 高田 2009, p. 8.
  11. ^ a b 松浦茂. “清朝の『皇輿全覧図』作製とその世界史的な意義に関する研究”. KAKEN. 2024年1月13日閲覧。
  12. ^ a b JIIA -日本国際問題研究所-”. www.jiia.or.jp. 日本国際問題研究所. 2024年1月13日閲覧。
  13. ^ 船越 1969, p. 146.
  14. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2015年9月29日). “中国の尖閣領有権主張、また崩れる 17世紀作製の「皇輿全覧図」に記載なし”. 産経ニュース. 2024年1月13日閲覧。
  15. ^ a b 船越 1972, p. 74f.
  16. ^ 海野 1991, p. 6f.

参考文献




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