登録衛生検査所と病理診断科
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 08:36 UTC 版)
「病理科」の記事における「登録衛生検査所と病理診断科」の解説
登録衛生検査所は臨床検査技師等に関する法律で定義された検査施設である。臨床検査のうち患者身体から採取された検体について、検体検査や病理学的検査を請け負うことができる。医療機関から見たら検査外注先である。検査や判定など医行為に属さないものに限定されており、病変の判断は医行為であり登録衛生検査所では受託できないはずであるが、病理検査室のない病院や診療所から診断を含む病理学的検査が登録衛生検査所に外注されていた。検体検査を外注することで、医療機関は検査差益(委託検体検査の検査価格差)を得ることができるので、ここ数年で病理学的検査の外注化が加速した。 90年初期に登録衛生検査所において、受託している病理学的検査が違法かどうか議論されたことがある。登録衛生検査所が発行する病理検査報告書は病理診断の意見書であり、診断書ではないから医行為には属さないという意見があった。その他に、「病理医が病変を判断しているものの、意見書である報告書に基づいて臨床医が治療方針を決定しているので患者に対しての責任は臨床医にある」、「検査を受託しているのであり、診断は病理医が行っており、登録衛生検査所が診断をしているのではない」、「外注して利益を得ているのであるから出す側に責任がある」などと議論していた。1990年代初期にすでに脱輪していたのであろう。しばらくして内視鏡生検や切除された癌組織についての病理学的検査が激増し、積み上がった標本を前に業務に追われることになり、登録衛生検査所での病理のあり方について議論する余裕がなくなってしまった。 2008年に病理診断科(臨床病理科)が標榜科入りし、診療報酬点数改定で病理学的検査が第3部検査から第13部に移り病理診断に名称変更された。衛生検査所が受託可能な病理学的検査が病理標本作製と検査・判定となるならば、病理・細胞診検体が出る医療機関では病理診断科が用意されることになり、病理専門医、細胞診専門医が病理診断科の常勤医師、非常勤医師として診断業務を行うことになる。または病理診断科を標榜する診療所や医療機関と連携する必要がある。開業医や中小病院等の病理検査室がなく標本作製ができない医療機関は、今後も、病理標本と細胞診標本作製を含む病理学的検査を外部に業務委託できることには変わりはない。登録衛生検査所としては、大手の場合は、診断行為が切り離れるため医療訴訟のリスクが少なくなり、企業価値が高まることが期待される。中小の場合は、病理診断科との連携を模索したり、検体検査業務を拡大するなどの経営努力が求められるかもしれない。登録衛生検査所は多くが株式会社であり、業容変更があるとすれば、少なくとも経営計画上中長期(4年以上)相当の猶予期間が必要であろう。
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