病変の解析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/28 06:07 UTC 版)
頸動脈狭窄症が脳虚血症状を引き起こす機序としてはその多くが頸動脈分枝部のプラークからの塞栓症(artery to artery embolism、動脈間塞栓症)とされている。しかし血行力学の機序の関与も知られている。この2つの機序は独立ではなく相互の影響している。低灌流の場合は血流による塞栓のwash outが障害され梗塞となるばあいがある。これをwashout theoryという。 頸動脈狭窄症によるアテローム血栓性脳梗塞の病変には大きく6つのパターンが知られており、パターンごとにある程度の発症機序の推定が可能である。高度狭窄(70~99%狭窄)では50~69%狭窄と比較して血行力学の関与が疑われる梗塞パターンを取りやすいことが知られている。日本における検討では50%以上の頸動脈狭窄を有する患者の半数近くにinternal watershed areaの病変が生じており、対側閉塞が加わるとinternal watershed area infarction、cortical watershed area infarctionを生じやすくなる。cortical small infarctionやterritorial infactionは75%以下狭窄では生じにくい。頸動脈狭窄による発症は大部分が塞栓性機序とされているが、潜在的にはさまざま血行力学的な因子の影響を受けている可能性がある。 internal watershed area infarction 側脳室に近接した内側分水嶺領域の病変である。側脳室前角から半卵円中心にかけて点状斑状に多発する病変であり、皮質小梗塞の合併は少なく、rosary-like patternと呼ばれる。狭窄遠位の低灌流圧や側副血行路未発達な場合に生じやすく、血行力学的な因子の関与が大きいとされる。 cortical watershed area infarction 楔状の皮質分水嶺領域の病変である。側脳室近傍ではinternal watershed areaと重なる部分もあるが、側脳室前角または後角から扇状に皮質まで広がり、病理学的にもmicro-embolismが証明されることが多い。micro-emboliは粉砕されやすく、50μm以下になると毛細血管のすり抜けが生じるため画像上把握ができなことが多い。主幹動脈の低灌流が加わるとwash outが生じにくくなり血行力学的な因子が相乗的に作用する。これをwashout theoryという。 穿通枝領域のラクナ梗塞 穿通枝の動脈硬化以外にBADや稀に塞栓性の関与が考えられる。 cortical small infarction 1本または複数本の還流領域、主に皮質に10~15mmの小病変をしめす。おもにartery to artery embolism(動脈間塞栓症)によって生じるパターンである。 territorial infaction 1本または複数本の灌流領域の大きな病変である。 複合型 上記5つの病型を複合することもある。
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