男性動画配信者富士山滑落事故とは? わかりやすく解説

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男性動画配信者富士山滑落事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/03 20:26 UTC 版)

男性動画配信者富士山滑落事故
日付 2019年10月28日
時間 14時30分頃(日本標準時
レポーター ライブ配信の視聴者
撮影 被害者男性
死者 1人
受賞 ダーウィン賞(2020年)
映像 Japanese hiker SLIPPED from top of Mt. Fuji on LIVE STREAM - YouTube
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男性動画配信者富士山滑落事故(だんせいどうがはいしんしゃふじさんかつらくじこ)とは、2019年10月28日富士山で発生した滑落事故である[1]。動画をニコニコ生放送ライブ配信しながら富士登山を行っていた47歳男性(以降Tと記す)が富士山頂から滑落し[1][2]、2日後に遺体となって発見された[3]

概要

Tは本名は明かさず、TEDZU(テツ)と名乗って活動していた[1][4]

司法試験への挑戦が苦戦する中、40代になったTは富士登山に熱中するようになり、配信者が大勢集まって富士登山をするイベントに参加した経験もあった[1]。Tは以前から富士登山の様子のライブ配信を多数行っており、2019年5月から事故発生時までに少なくとも26回富士登山の様子のライブ配信を行っていたことが記録されている[5]

事故の5日前、Tのライブ配信の視聴者が「雪景色の富士山見たい」とコメントし、Tは「見たい?雪もう降っているかな。富士山なぁ」「富士山行く?今だったら多分そんなに寒くないんだわ。(気温は)マイナス3とか4でしょ、山頂。だから、パッと行って、パッと帰れば死なずにすむ。そんな寒い思いもしないで」と返信していた[1]。Tの配信仲間の一人は、Tは冬の富士山に登るようなタイプではなかったが、このコメントが印象に残っていて、冬の富士登山に行く気になったかもしれないと述べている[1]

10月28日、Tは1人で富士山に向かい、10時30分、富士山に到着し「雪の富士山へGO」というタイトルで吉田ルート登山口5合目から自身が登山する様子のライブ配信を開始した[1][4]。山頂は数日前に初冠雪したばかりであり、事故が発生した時期は十分な計画や準備なしの登山は禁止されていたが、Tは夏の装備で登っていった[1]

ライブ配信の会話からは、Tがだいぶ軽装であったことがうかがえ[注釈 1]ピッケルアイゼンなどの冬山装備は携行しておらず、警察関係者も「冬の富士登山ができるような装備ではなく、軽装だったようだ」と新聞にコメントしている[4][6]。Tは「手の感覚がない」「カイロ持ってくればよかった」と手が思うように動かない様子の発言をしていた[4]

14時30分頃、Tは富士山頂に到着[1]。富士山頂を歩きながら「よし、行こう。ここも危ないね、斜面。滑る。」と発言した直後、Tは足を滑らせ滑落した[1]。Tが滑落する様子はライブ配信されており、「うわぁ」という声と共に映像が乱れ、Tが回転しながら滑落する様子が写り込んだ後にライブ配信は停止した[6]

15時35分頃、ライブ配信の視聴者から110番通報があり、山梨県警察山岳遭難救助隊と静岡県警察山岳遭難救助隊が捜索を開始した[2][6]。10月30日、山岳救助隊が須走口の7合目付近(標高約3,000メートル)で性別不明の遺体を発見、11月12日に遺体がTであることが判明した[3]

反応

Tが滑落する動画を見た登山家野口健は「ピッケル、アイゼンはうつっていない。また、滑落した直後の映像では自身の足が映っていますが、ハイカットの登山靴ではなく軽登山靴または運動靴。スパッツなし」と装備不足を指摘し、「雪山に登るという自覚が全く感じられない。ノリだけで登ってしまったような印象も。残念」の嘆いた[7][8]

Tが下山しても危機的だった可能性が指摘されており、地元・富士宮山岳会の工藤誠志会長は11月1日、J-CASTの取材に「男性の方が足を滑らせた地点から下山するとすれば、標高2400メートルの富士宮口か、1450メートルの御殿場口か、のいずれかだと思います。でも、夏山の基準で言いましても、富士宮口まで3、4時間、御殿場口まで5時間はかかります。冬山で日没も早いですので、17時には真っ暗になります。コースが分かっていたとしても、明るいうちには着けないでしょうね」と述べ、Tがヘッドランプを持っていれば、下山を続けることはできるものの、それでもコースを熟知していることが必要だとしている[9]。また、「風がありますと、10月でも低体温症になった事例があります。男性が山頂にいたときは、気温がマイナス5度にまで下がっています。指に凍傷ができても動けますが、低体温症になりますと、脳の機能が低下して動けなくなってしまいます。また、昼に溶けた雪が夜に固まり、積もった雪が風で飛ばされ、つるつるのアイスバーンになっており、アイゼンの刃でも少ししか刺さりません。ですから、とても滑りやすくもなっており、冬の富士山で訓練してから、ヒマラヤ登山を目指す人も多いですね」と、下山を続けていたとしても、低体温症で動けなくなる恐れもあると述べた[9]

ダーウィン賞

2020年6月、Tは不名誉な死を迎えた人物に贈られるダーウィン賞の2020年度の受賞者に選ばれた[10][11]

ただし、このダーウィン賞の解説にはいくつかの間違いがあることが指摘されており、例えば、スマートフォンを常に片手に持ちながら、そのカメラでライブ配信しながら富士登山を行ったために死亡したかのように解説されているが、実際にはTは帽子に付けたウェアラブルカメラで映像を撮影しながら、それをポケットに入れたスマートフォンのアプリでライブ配信をしていた[12]。また、ライブ配信の視聴者からのコメントもスマートフォンを操作して見ていたのではなく、コメントを自動で読み上げるアプリを通して耳で聞き、口でコメントに返信していた[12]

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j 「なぜ男は冬富士に向かったのか?〜ネット生配信の先に〜」”. クローズアップ現代. 日本放送協会 (2019年12月18日). 2025年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月2日閲覧。
  2. ^ a b 富士山で性別不明の遺体、インターネット配信中に滑落の男性か”. 産経新聞:産経ニュース. 産経新聞社 (2019年10月30日). 2025年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月2日閲覧。
  3. ^ a b ニコ動配信中に富士山で滑落死、東京都の47歳男性”. 産経新聞:産経ニュース. 産経新聞社 (2019年11月18日). 2025年9月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月2日閲覧。
  4. ^ a b c d e 武田, 安恵 (2019年10月30日). “富士山で動画生配信中に滑落、増える安易な山登りの危うさ”. 日経ビジネス電子版. 日経BP. 2025年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月2日閲覧。
  5. ^ 富士山7合目付近で遺体発見 登山のライブ配信中滑落した人か | NHKニュース”. NHKニュース. 日本放送協会 (2019年10月30日). 2019年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
  6. ^ a b c 治, 羽根田 (2023年1月9日). “(4ページ目)「あっ、すっ、滑る」滑落事故の一部始終が生配信…厳冬の富士山で起きた“信じ難い惨劇” | そのとき現場で何が起きたか”. 文春オンライン. 文藝春秋. p. 4. 2025年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月2日閲覧。
  7. ^ 野口, 健 [@kennoguchi0821] (2019年10月31日). "映像を見ましたが…。". 2023年4月17日時点のオリジナルよりアーカイブX(旧Twitter)より2025年5月3日閲覧
  8. ^ 野口健氏、配信中に滑落した男性に「ノリだけで登ったような印象」”. サンスポ. 産経新聞社 (2019年10月31日). 2025年5月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
  9. ^ a b 野口, 博之 (2019年11月1日). “富士山滑落のニコ生配信者、下山しても危機的だったか 専門家「17時には真っ暗。コースが分かっていても...」”. J-CAST ニュース. J-CAST. 2025年5月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月3日閲覧。
  10. ^ Northcutt, Wendy (2020年). “2019 Darwin Award: Pinnacle Of Stupidity” (英語). darwinawards.com. 2025年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月2日閲覧。
  11. ^ 「ダーウィン賞」日本人受賞 ネットでは違和感も”. J-CAST ニュース. J-CAST (2020年6月4日). 2025年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月2日閲覧。
  12. ^ a b 篠原, 修司 (2020年6月7日). “ダーウィン賞「スマホ片手に配信しながら冬富士登山した男性が滑落死」とミスリード。実際はアクションカム(篠原修司) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. LY Corporation. 2025年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月2日閲覧。

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