生成物のpH
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 03:51 UTC 版)
中和反応では、生成物のpHが必ず7になるとは限らない。強酸と強塩基の中和反応の場合、生成物のpHは7になる。例えば、強酸HClと強塩基NaOHは、反応して食塩水を生じる。 HCl + NaOH ⟶ H 2 O + NaCl {\displaystyle {\ce {HCl\ + NaOH -> H2O\ + NaCl}}} H3O+またはOH-の濃度の正味変化がないので、最終的なpHは7となる。 弱酸と強塩基の中和の場合、生成物のpHは7よりも大きくなる。例えば、弱酸 CH 3 COOH {\displaystyle {\ce {CH3COOH}}} と強塩基NaOHは、反応して水と Na + {\displaystyle {\ce {Na^+}}} 、 CH 3 COO − {\displaystyle {\ce {CH3COO^-}}} を生じる。 CH 3 COOH + NaOH ⟶ Na + + H 2 O + CH 3 COO − {\displaystyle {\ce {CH3COOH\ + NaOH -> Na^+\ + H2O\ + CH3COO^-}}} Na+は反応に関与しないイオンである。しかし、酢酸塩は弱塩基であり、水を加水分解してOH-イオンを生成する。 CH 3 COO − + H 2 O ↽ − − ⇀ CH 3 COOH + OH − {\displaystyle {\ce {CH3COO^-\ + H2O <=> CH3COOH\ + OH^-}}} 従って、生成物の溶液は塩基性となる。 弱塩基と強酸の中和の場合、生成物のpHは7よりも小さくなる。例えば、弱塩基CN-と強酸HClは、反応してCl-とシアン化水素酸HCNを生じる。 CN − + HCl ⟶ Cl − + HCN {\displaystyle {\ce {{CN^{-}}+HCl->{Cl^{-}}+HCN}}} Cl-は反応に関与しないイオンである。しかし、シアン化水素酸は弱酸であり、水を加水分解してH3O+イオンを生成する。 HCN + H 2 O ↽ − − ⇀ CN − + H 3 O + {\displaystyle {\ce {{HCN}+H2O<=>{CN^{-}}+H3O^{+}}}} 従って、生成物の溶液は酸性となる。 弱酸と弱塩基の中和の場合、生成物のpHは、反応物の酸と塩基の相対強さに依存する。例えば、弱塩基 CN − {\displaystyle {\ce {CN^-}}} と弱酸 CH 3 COOH {\displaystyle {\ce {CH3COOH}}} は、反応して HCN {\displaystyle {\ce {HCN}}} と CH 3 COO − {\displaystyle {\ce {CH3COO^-}}} を生じる。 CH 3 COOH {\displaystyle {\ce {CH3COOH}}} (pKa=4.75) は、 HCN {\displaystyle {\ce {HCN}}} (pKa=9.2) よりも強い酸であるため、平衡は右にずれ、等モルの弱酸と弱塩基を生じる。 CN − + CH 3 COOH ↽ − − ⇀ HCN + CH 3 COO − {\displaystyle {\ce {{CN^{-}}+CH3COOH<=>{HCN}+CH3COO^{-}}}} 酢酸イオンはさらに水と反応し、酢酸とOH-イオンを生成する。 CH 3 COO − + H 2 O ↽ − − ⇀ CH 3 COOH + OH − {\displaystyle {\ce {{CH3COO^{-}}+H2O<=>{CH3COOH}+OH^{-}}}} この例の場合、生成した溶液は塩基性である。しかし、これは、弱酸と弱塩基の中和反応の一般的な法則ではない。
※この「生成物のpH」の解説は、「中和 (化学)」の解説の一部です。
「生成物のpH」を含む「中和 (化学)」の記事については、「中和 (化学)」の概要を参照ください。
- 生成物のpHのページへのリンク