現実における三面等価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 15:39 UTC 版)
「三面等価の原則」の記事における「現実における三面等価」の解説
ここまで三面等価が成立するということを述べてきたが、これは生産されたものが過不足なく需要されているということを仮定している。 しかし生産されたものが売れ残ったり、逆に品不足となったりしているのが現実の姿であり、現実に生産されたものが過不足なく需要されているということは非現実的である。国民経済計算の統計上の需給が一致しているからと言って現実の経済で計画通りに全ての財・サービスが売り切れる状態が成り立っているわけではない。 例えば上記表「日本の2010年のGDP」の「支出面」で示した「在庫品増加」という項目は「在庫投資」とも呼ばれ、国民経済計算では住宅投資や設備投資などとともに「投資」に含められるが、これが売れ残って在庫となったがための「在庫品増加」なのか、それとも企業が「意図した在庫投資」としての「在庫品増加」なのか、統計上の数字を見ているだけでは判断できない。確かに「在庫」は来期以降の経済活動で活用されるものであり、これを「投資」と呼んだとしても用語としては誤りではないが、だからと言って必ずしもそれが企業の「意図した在庫投資」であったということにはならない。 このように国民経済計算においては計画通りに販売することができなかったものも「意図した在庫投資」と同様に「在庫品増加」という項目として処理しているため、総需要と総供給が常に一致している。現実社会における景気の動向を判断する際には、国民所得統計における「在庫品増加」の数値が減少していることで、商品の売れ行きが好調であると考えることの判断材料のひとつとすることもできるが、「在庫品増加」の増減のうち、いくらが売れ残って在庫となったがための「在庫品増加」であり、いくらが「意図した在庫投資」としての「在庫品増加」であるのかは明確に判断できるわけではないことを留意する必要がある。。 経済統計の集計値は三面が等価であるように見えるが、実際の統計値には誤差があるため、生産側からの推計値と支出側からの推計値を一致させるため誤差脱漏分に対して統計上の不突合という調整項目を仮想的に計上し、二側面から推計したGDPを人為的に一致させている。
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