現代の核兵器でのブーストの利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/30 07:28 UTC 版)
「ブースト型核分裂兵器」の記事における「現代の核兵器でのブーストの利用」の解説
現代のブースト型核分裂兵器では、重水素ガスと三重水素ガスの混合物は、これを球殻状の核物質の中空部(hollow cavity、爆縮型核分裂兵器の核物質は通常このような球殻状である)に注入するか、または核物質の外側の劣化ウランなどでできたタンパーと、レビテイトされた (levitated:隙間によって浮かされた)内側の核物質コアとの間に設けられたギャップに注入する。固体の重水素化リチウム・三重水素化リチウムが使用される場合もあるが、ガスの方がフレキシビリティーが大きく、外部に保存することも可能である。三重水素は核分裂兵器の運用年数に対して相対的に半減期が短い(12.32年)ため、十分な効果を発揮させるためには三重水素ガスを定期的に交換するか、あるいは起爆の少し前に核兵器の外部から新鮮なガスを注入することが望ましく、実戦でもそのような運用が行われている模様である。 ブースト型核分裂兵器の第1の利点は、早期発火リスクの低減である。兵器級プルトニウムを用いて製造された正規の核兵器で早期発火を起こす確率は非常に低いが、実戦において近い距離での核爆発によって中性子照射を受けた場合は核物質内に自発核分裂を起こしやすい同位体が生じるため、後で起爆した際に早期発火を起こして、高い核出力を達成する前に飛散してしまう確率が高まる。核融合ブースト型核分裂兵器では、このような近接した核爆発による中性子照射に対しても、非ブースト型の核兵器よりは影響を受けにくくなる。 第2の利点は、高い核出力の割には重量を減少できる効率性であり、このため前述のように核兵器の小型化には不可欠な技術ともなっている。 現代の核兵器のほとんどは、第1段の核分裂兵器と第2段の核融合兵器を組み合わせた2ステージ型の核融合兵器であるが、上記のような利点から、第1段はほとんどの場合核融合ブースト型核分裂爆弾であり、特に現在米国が保有する核兵器は全てそうである(図参照)。 また、ある核兵器設計者によれば、核兵器における著しい効率の向上(1945年以来、約100倍)の理由の大部分はブースト技術によるものであるとする。
※この「現代の核兵器でのブーストの利用」の解説は、「ブースト型核分裂兵器」の解説の一部です。
「現代の核兵器でのブーストの利用」を含む「ブースト型核分裂兵器」の記事については、「ブースト型核分裂兵器」の概要を参照ください。
- 現代の核兵器でのブーストの利用のページへのリンク