熱放射・空洞放射
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量子統計力学が物理学の世界に初めて登場したのは1900年、今日ではプランクの法則として知られる、マックス・プランクによる熱放射の理論で、これは実に量子力学が現在のような形式で認識される以前のことであった (光電効果がハインリッヒ・ヘルツによって発見されたのが1887年、アルベルト・アインシュタインの光量子仮説による説明が1905年。1924年のルイ・ド・ブロイによる物質波のアイデアに基づいて、ヴェルナー・ハイゼンベルクによる行列力学が1925年に発表、エルヴィン・シュレーディンガーによる波動力学が1926年に発表された。同年、シュレーディンガーは波動力学と行列力学が等価な理論であることを示している。また、ハイゼンベルクによる不確定性原理の発見は1927年の事である)。空洞の中に閉じ込められて、空洞の壁と熱平衡になっている電磁場(黒体放射)に古典統計力学を適用すると、エネルギー等分配の法則により、各単色光成分が平均としてはいずれも kBT なるエネルギーを持つことになる。ここで kB はボルツマン定数、T は壁の熱力学的温度を表す。しかしこれでは空洞内の電磁波のスペクトル分布がまったく実験と合わないばかりか、電磁場は無限に自由度を持っているため、空洞内のエネルギーも熱容量も無限大になってしまう。量子論では、振動数 ν の単色光成分は量子化されてエネルギーhν をもつ光子としてふるまい、光子はボース分布に従うので、この単色光成分のエネルギーの平均値は hν/(eβhν-1) となる。ここで、 β = (kBT)−1 は逆温度、また h はプランク定数である。これで分かるように、 hν ≫ kBT ⇔ βhν ≫ 1 を満たすような高い振動数の電磁波は、古典統計力学の記述から著しく外れる。
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