熱力学的極限を取る理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/25 03:40 UTC 版)
「熱力学的極限」の記事における「熱力学的極限を取る理由」の解説
熱力学的極限は、本質的に確率論における中心極限定理の帰結である。 N 個の気体分子の内部エネルギーは N 個オーダーの項の和であり、それらはほとんど独立な変数であると考えられる。したがって、中心極限定理により、平均値とゆらぎの大きさの比は 1/N1/2 になる。したがって、アボガドロ数個程度のマクロな系に置いては、ゆらぎは無視できるほど小さく、熱力学が適用できる。一般に、ほぼすべてのマクロな大きさの系は、気体・液体・固体のいかなる場合でも熱力学的極限として扱える。 小さな系においては、統計分布(ミクロカノニカル分布、カノニカル分布、グランドカノニカル分布など)のうち異なったものを用いると、振る舞いが異なることがある。例えば、カノニカル分布では系の粒子数は固定されているが、グランドカノニカル分布においては粒子数は変数である。熱力学的極限においては、この差は重要では無くなる。 マクロな示量変数が加法性を示すのも、熱力学的極限の特徴である。一例を挙げれば、2つの系を合体させたとき、エントロピーはそれぞれの系のエントロピーの和になる(エネルギーや体積においても同様)。一部の統計力学的モデルでは、熱力学的極限は存在するものの境界条件に依存することがある。例えば6頂点模型ではこのような現象が生じるが、これはバルクの自由エネルギーが周期的境界条件と非周期的境界条件で異なるためである。
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