焦点距離・絞りと被写界深度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/03 09:39 UTC 版)
「被写界深度」の記事における「焦点距離・絞りと被写界深度」の解説
一般に被写界深度はレンズの焦点距離、絞り、許容錯乱円の大きさに依存する。具体的には次のように計算される。 はじめに、その距離の被写体にピントを合わせたとき無限遠が被写界深度の後端ぎりぎりに入るような距離(これを過焦点距離と呼ぶ)を計算する。過焦点距離をH、レンズの焦点距離をf、レンズの絞り値をN、許容錯乱円の直径をcとするとその関係は以下のとおりとなる。 H ≈ f 2 N c {\displaystyle H\approx {\frac {f^{2}}{Nc}}} (以降の計算を単純にするための近似値。正確には H = f + f 2 N c {\displaystyle H=f+{\frac {f^{2}}{Nc}}} ) つぎに、任意の距離の被写体に焦点を合わせたときの被写界深度の前端と後端をそれぞれ計算する。被写体の距離をs、被写界深度の前端後端をそれぞれDN、DFとすると以下のとおりとなる(レンズの焦点距離に対して、レンズから被写体までの距離が十分に大きい場合の近似)。 D N ≈ s ( H − f ) H + s − 2 f {\displaystyle D_{N}\approx {\frac {s(H-f)}{H+s-2f}}} D F ≈ s ( H − f ) H − s {\displaystyle D_{F}\approx {\frac {s(H-f)}{H-s}}} 上記の式から以下のことがわかる(式から直接読み取るのは困難だが、実際に計算すると分かる。厳密な式と計算法は例えば外部リンク「カメラと光について」等に記載がある)。 被写界深度はレンズの焦点距離が短い(広角よりな)ほど深くなる。 被写界深度は絞りを絞り込む(F値が大きい)ほど深くなる。 この性質を利用して、トイカメラやレンズつきフィルムなどの多くは、ピント合わせのための機構を省略したパンフォーカスの設定で使用することが多い。 しかしながら、絞り値をあまり大きくすることにも問題がある。ある程度以上絞り込んだ場合、絞りによる光の回折現象によっていわゆる小絞りボケと呼ばれる現象が発生する。許容錯乱円の大きさが小さい、小サイズフォーマットほどこの傾向は顕著となり、デジタルカメラなどで問題とされるケースがある。 また、被写界深度はフィルムフォーマットの影響も受ける。同じ画角で撮影しようとしたとき、焦点距離はフィルムや撮像素子のサイズに比例し、許容錯乱円の直径もまた大雑把にはフィルムのサイズに比例する。前者はフィルムのサイズが小さいほど被写界深度が深くなる影響を及ぼし、後者は逆にフィルムのサイズが小さいほど被写界深度が浅くなる影響を及ぼす。前者の影響は後者の影響よりも大きいため、同じ画角・距離・絞り値で撮影したときの被写界深度はフィルムサイズが小さいほど深くなることになる(詳しくは下記外部リンク参照)。デジタルカメラは、既存の35ミリフィルムでの画面サイズよりも小さな撮像素子を使っていることが多い(フルサイズ機を除く)ので、被写界深度が深くなり、ボケを生かした撮影などには不向きであるといわれているが、一方パンフォーカスの撮影や奥行きのある被写体のマクロ撮影には向いている(近接撮影では被写界深度が浅くなりやすい)。
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